・・・そういうことについて苦痛を感じる若い女の心が、真率にその苦痛を社会的にも訴えてゆく、そこにも自然な女らしさが認められなければならないのだと思う。女自身が、女同士としてそのことを当然とし自然としてゆく気持が必要だといえると思う。こういう場合に・・・ 宮本百合子 「新しい船出」
・・・風な瞼のきれ工合に特徴があるばかりでなく、その眼の動き、眼光が、ひとくちに云えば極めて精悍であるが、この人の男らしいユーモアが何かの折、その眼の中に愛嬌となって閃めくとき、内奥にある温かさの全幅が実に真率に表現される。それに、熱中して物を云・・・ 宮本百合子 「熱き茶色」
・・・常識的な大人を恐怖させるほど率直な真実探求の欲望にもえる十五六歳より以後の年代を、これらの有能な精神は、そのままの真率さで戦争のための生命否定、自我の放棄へ導きこまれた。専門学校では文科系統の学徒が容しゃなく前線へ送り出され、理科系統のもの・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・ 作家たちは、自分たちの生きている意義として、今日、真率な情熱で、自分がかつてとり逃した覚えがあるならば、その人生的モメントをふたたび捉えなおし、抑圧されてきた人民の苦き諸経験の一つとしてしっかり社会の歴史の上につかみ、そのことで生活と・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・作者は忠直卿とともに、人間関係の真率、偽りなさ、まことの現実を求める人間の情熱を辿ってはいるが、虚偽を生む社会関係を主体的に忠直卿から判断させてはいない。被動的に隠居仰せつけられその外力によって、社会関係の一部が変えられる迄は、さながら、自・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・その一心な若い真率な心を、その姿の与える空気で裏切っていたということは、娘さんたちにとって本当に可哀相と思う。疲れて浦和へかえったとき、彼女たちの心にはたして出発のとき燃えていた明るいたのしい気分が、たっぷりつぐのわれてあっただろうか。・・・ 宮本百合子 「女の行進」
・・・ それは混乱がそのまま語られているわけだが、みんな映画通ではあるまいし、生活のいろんな心持の要求で観たのだから、それなりの真率さが流露してきくものの心持では素直にきける。本質はそういうものなのに、考えた言葉に翻訳してあんな風に云うことは・・・ 宮本百合子 「女の歴史」
・・・ こんにち、もっとも真率に探求的な態度で語られなければならないのは、理性の構成と機能、の課題である創作方法の問題ではないだろうか。しかもそれについて語りかたは、歴史の現実とともに急激に推進されて、わたしたちは、創作方法についてメリー・キ・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・ と問いかけて行く真率溌剌さこそわれらのものでありたいと思います。〔一九三九年四月〕 宮本百合子 「最初の問い」
・・・ 世界的な経済恐慌は、この地球の上六分の一を除いたあらゆる国々において、健康で真率な心を持った若い男女を、結婚の問題で苦しめている。結婚年齢のおくれることが一般の傾向となって来たのにたいし、アメリカの百万長者の息子と娘らの間に一つの流行・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
出典:青空文庫