・・・それこそは青春のかえがたい贈物である知識欲や成長への欲望、よりよい生活へ憧れるみずみずしい心の動きは、現実にぶつかって、一つ一つその強さを試みられているわけだが、その現実は、青春の思いや人間の成長をねがう善意に対して、何と荒っぽい容赦ない体・・・ 宮本百合子 「ものわかりよさ」
・・・学校がつまらないということ――旺盛な知識欲をみたすほんとの勉強が学校にはかけているということについて、こんにちの若いひとの苦痛は、共通である。それは無理もない。学校教育というものが与える最もよいことは、そのひとが一生自分で勉強をつづけてゆけ・・・ 宮本百合子 「若い人たちの意志」
・・・ 二人と一しょに居残った山田は、頻りに知識欲に責められるという様子で、こんな問を出した。「実は無政府主義というものは、どんな歴史を持っているものかと思って、こないだもある雑誌に諸大家の話の出ているのを読んで見たが、一向分からない。名・・・ 森鴎外 「食堂」
・・・ひどく知識欲の強い人である。 二三週間立ってから、或る日私はF君がどんな生活をしているかと思って、役所からの帰掛に立見をおとずれた。丁度お上さんが門口から一匹の小犬を逐い出しているところであった。「どうも内の狆が牝だもんですから、いろん・・・ 森鴎外 「二人の友」
出典:青空文庫