・・・ 色を説いた著者はまた第二百十七段で蓄財者の心理を記述しこれに対する短評を試みている。引用された大福長者の言葉は現代の百万長者でもおそらく云うことであろうし、金持になりたい人々の参考すべき「何とか押切帖」の類であろうが、またこれに対する・・・ 寺田寅彦 「徒然草の鑑賞」
・・・新聞雑誌に現われる短評などにも随分こういう心持をそのままに云い表わしたのが多いように見える。それで多くの人の口からは「今年のもつまらない」という概括的な歎息がもらされる。出品者に取っておそらくこれほど残念な張合いのない事はあるまいと思う。こ・・・ 寺田寅彦 「帝展を見ざるの記」
・・・その次に行った時に返してもらった句稿には、短評や類句を書き入れたり、添削したりして、その中の二三の句の頭に○や○○が付いていた。それからが病みつきでずいぶん熱心に句作をし、一週に二三度も先生の家へ通ったものである。そのころはもう白川畔の家は・・・ 寺田寅彦 「夏目漱石先生の追憶」
・・・その結果として冒頭だか序論だかに私の演説の短評を試みられたのはもともと私の注文から出た事ではなはだありがたいには違ないけれども、その代り厭にやり悪くなってしまった事もまた争われない事実です。元来がそう云う情ない依頼をあえてするくらいですから・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・は明るい方から書いたものという意味の短評をしていられた。「勝沼戦記」は伏見鳥羽の戦いに敗れて落ちめになってからの近藤勇と土方歳三とが、新撰組の残りを中心とする烏合の勢をひきいて甲陽鎮撫隊をつくり、甲州城にのり込もうと進むところを、勝沼で・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・彌次というものを、庶民的な短評の形、川柳、落首以前のものとして考えれば、その手裏剣めいた効果、意味、悉く否定してしまうことは出来ないけれども、その形そのものが、徳川時代のものであって、彌次馬ほどこわいものはなし、に通じる要素をも持っているこ・・・ 宮本百合子 「待呆け議会風景」
出典:青空文庫