・・・だらだら坂を、もと入場券売場になっていた小さい別棟の窓口へのぼって行った。そしたら、そこはもう使われていず、窓口から内部をのぞいたら板ぎれなどが乱雑につんであった。七年ばかり前、春から夏、秋、冬と、ちょいちょい通っていた頃は、ここの窓口で特・・・ 宮本百合子 「図書館」
・・・我々一行もその列に並んで窓口から掛の婦人労働者に電気安全燈を貰った。「配燈室」の入口の廊下から、みんなが列をつくっている場所の壁まで、うまく注意をひきつけるように傷害予防のポスターが貼りまわされている。「注意! 注意! 命をすてるな・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
・・・郵便局の窓口で十枚ばかり一銭切手を買った。ハイと若い女事務員に出された切手を見て、わたしは、あら、と思った。その一銭切手は、わたしの視線をひきつけた。これまで日本の切手の図案と云えばあきもせず乃木大将・東郷大将一点ばりで、すこし変化したと思・・・ 宮本百合子 「郵便切手」
出典:青空文庫