・・・しかるに連句の場合にはこれが本質的な第一義的の主要素であってこれを取ってしまえば連句はなくなってしまうのである。 以上述べたところを約言してみると、連句は音楽と同じく「律動」と「旋律」と「和声」をその存立要件として成立するものである。そ・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・であるが、毎日の仕事に追われた上に、夜なべ仕事でくたびれて、やっと床につく多くの人には枕上は眠る事が第一義である。それで眠られないという場合は病気なのだからろくな考えは出ないのが普通である。「厠上」のほうは人によると現在でも適用するかも・・・ 寺田寅彦 「路傍の草」
・・・そうすると小説は第二義のもので、第一義のものじゃなくなって来る。否、小説ばかりじゃない、一体の人生観という奴が私にゃ然う思えるんだよ……思えると云うと語弊があるが、那様気がするのだ。どうも莫迦々々しくてね。だから作をする時にゃ、精神は非常に・・・ 二葉亭四迷 「私は懐疑派だ」
・・・けれども地方の地理的な特色がその地方の文化の発展の第一義的要素であるということはいえないと思う。なぜならいくら海辺の村でもそこに住む人間が、海へ出て漁をして生存しなければならないという必要がなければ、漁村の文化の一大特徴である船を造る技術が・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・はっきり、彼等が生きて行く上に何を第一義に感じていたかと云うことが見える。幼稚であり、未開であるにしろ、生活にこれが第一、というのを把持していた、いようとした跡が見える。 今日、私共の上野図書館は、遙に進んだシステムによって管理されてい・・・ 宮本百合子 「蠹魚」
・・・、「獄」、「第一義の道」、「再建」などによってこの数年来思想的放浪に置かれた知識階級の良心の支柱となり得るかのような作品の居住居を示して来たこの作家は、「生活の探求」に到って一つの転回を示した。これは、都会の大学に苦学的な学生生活を営んでい・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・集中排除が緩和され「第一義的軍事施設以外は日本から極く僅かな施設しか賠償として撤去しないよう」にと、ストライク委員会の報告が示しているという記事をよむと日本の勤労階級すべての人々は男も女も、日本の軍国主義の残滓はどこまで払拭され得るだろうか・・・ 宮本百合子 「正義の花の環」
・・・を『第一義』に発表。十月文芸座によって「津村教授」初演。菊池、久米、岡本、中村氏等と劇作家協会を創設。三十四歳の時である。 翌一九二一年。「坂崎出羽守」を発表。翌月市村座で初演。「嬰児殺し」有楽座で初演。 一九二二年。「女親」帝劇に・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・先生はいかなる場合にも第一義のものをごまかして通る事ができなかった。たとえ世間が普通の事と認めていようとも、とにかく虚偽や虚礼である以上は、先生はひどくそれをきらった。先生の重んずるのはただ道徳的心情である。形式習慣にむやみと反抗するのでは・・・ 和辻哲郎 「夏目先生の追憶」
・・・として第一義に活動せんとするものは、一度は人生問題の関門に到達せねばならぬ。二 眼を人生の百般に放つ。光明なる表面は暗黒なる罪悪を包む。闇の中には爆裂弾をくれてやりたい金持ちや馬糞を食わしてやりたい学者が住んでいる。万事はた・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫