・・・それと共に、フランス小唄のうまい、美食家の、「美しく煙草を吸い、奇智にとんで、男の知人を揺ぶる」ことのやめられない貴族学校出のオリガとの生活は、彼を歩いて来た道から脱する力をもっていることを理解しはじめた。ゴーリキイはオリガとしっかり抱き合・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・夫婦の生活で夫が妻を扶養するのは当然の義務だのに、妻たるものがわずかの美衣美食に飼い馴らされて人としての権利さえ自分から捨てている愚を、福沢諭吉は社会全体の進歩というところから痛歎している。「夫婦苦楽を共にするということは努々等閑にさるべき・・・ 宮本百合子 「三つの「女大学」」
・・・ それにしても、パリへ二度もゆき、フランス小唄のうまい、美食家の「美しく、煙草を吸い、奇智に富んで、男の知人をゆすぶること」がやめられない貴族女学校出のオリガに、何故ゴーリキイは卒倒する迄ひきつけられたのであったろう。ゴーリキイは単に雌・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
出典:青空文庫