・・・社会的という言葉の意味は、個性を没却し、特色を失うということであってはならない、全国一様の教科書は、単に学術的知識を教うるに役立つけれど、その知識が、果して、各児童等の特種的なる経験と一致するや否やを考究するには至らないのであります。 ・・・ 小川未明 「新童話論」
・・・対策を考究しようじゃないか。こまった。こまった。清水忠治。太宰先生、か。」 月日。「冠省。へんな話ですが、お金が必要なんじゃないですか? 二百八十円を限度として、東京朝日新聞よろず案内欄へ、ジュムゲジュムゲジュムゲのポンタン百円・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・なども、この大きな問題を考究するときの資料になるべきものであろう。 映画の世界の道徳は人間の世界の道徳とは必ずしも一致しなくてもよい。それは世界がちがうからである。しかし、一般の観客にはこの二つの世界の相違が明白に意識されていない。それ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・こういう問題を、少し立入って考究し論議するとなると、事柄は存外複雑になって来て、おそらく、そうそう簡単には片付けられないことになるであろう。あるいは結局いつまで論議しても纏まりの付かないような高次元の迷路をぐるぐる廻るようなことになるかもし・・・ 寺田寅彦 「学問の自由」
・・・烏合の衆の八十人ではおそらく一坪の物置きの火事でも消す事はできないかもしれないが、しかし、もしも充分な知識と訓練を具備した八十人が、完全な統制のもとに、それぞれ適当なる部署について、そうしてあらかじめ考究され練習された方式に従って消火に従事・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
・・・ない烏合の衆の八十人ではおそらく一坪の物置の火事でも消す事は出来ないかもしれないが、しかし、もしも十分な知識と訓練を具備した八十人が、完全な統制の下に、それぞれ適当なる部署について、そうしてあらかじめ考究され練習された方式に従って消火に従事・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・その説はすぐに我邦の専門家の間にも伝えられ、考究され、紹介され、応用もされていた。今日物理学に興味をもつ人でボーアの名前とその仕事の一般を知らない人はおそらく一人もないはずである。 ところがこれほど専門家の目には顕著な人物の名前が「世間・・・ 寺田寅彦 「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・今回地震の起因のごときも、これを前記の定説や仮説に照らして考究するは無用の業ではない。これによって少なくも有益な暗示を得、また将来研究すべき事項に想い到るべき手懸りを得るのではあるまいか。 地震だけを調べるのでは、地震の本体は分りそうも・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・おり、その上に当代の有名な学者の数々を聚めているのであるから、この際思い切って気象台の観測事業の範囲を徹底的に拡張して、そうして前述のごときあらゆる天災の根本的研究とその災害に対する科学的方策の綜合的考究に努力せしめるのが最も時宜に適したも・・・ 寺田寅彦 「新春偶語」
・・・為政家が一国の政治を考究する時、社会経済学者がその学説を組み立てる時、教育者がその教案を作製する時、忘れずに少時このレコードの音に耳を傾けてもらいたい。あらゆる心と肉の労働者もその労働の余暇にこれらの「自然の音」に親しんでもらいたい。そうい・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
出典:青空文庫