・・・で、ほとんど首もまわらないと云う事――珍竹林主人はまだこのほかにも、いろいろ内幕の不品行を素っぱぬいて聞かせましたが、中でも私の心の上に一番不愉快な影を落したのは、近来はどこかの若い御新造が楢山夫人の腰巾着になって、歩いていると云う風評でし・・・ 芥川竜之介 「開化の良人」
・・・あえて世間をどうしようなぞという野心は無さそうに見えたのに―― お供の、奴の腰巾着然とした件の革鞄の方が、物騒でならないのであった。 果せるかな。 小春凪のほかほかとした可い日和の、午前十一時半頃、汽車が高崎に着いた時、彼は向側・・・ 泉鏡花 「革鞄の怪」
・・・世間に出て友だち仲間に交わりたいような夕方でも来ると、私は太郎と次郎の二人を引き連れて、いつでも腰巾着づきで出かけた。 そのうちに、私は末子をもその宿屋に迎えるようになった。私は額に汗する思いで、末子を迎えた。「二人育てるも、三人育・・・ 島崎藤村 「嵐」
出典:青空文庫