・・・決して、色白の、やさ男ではない。やさ男どころか、或る神学者の説に依ると、筋骨たくましく堂々たる偉丈夫だったそうではないか。虫も殺さぬ大慈大悲のお釈迦さまだって、そのお若い頃、耶輸陀羅姫という美しいお姫さまをお妃に迎えたいばかりに、恋敵の五百・・・ 太宰治 「花吹雪」
・・・丸く肥った色白な顔は決して美しいと思われなかった。少しそばかすのある頬のあたりにはまだらに白粉の跡も見えた。それで精一杯の愛嬌を浮かべて媚びるようなしなを作りながら、あちらこちらと活発に蝙蝠傘をさし出していた。上から投げる貨幣のある物は傘か・・・ 寺田寅彦 「旅日記から(明治四十二年)」
・・・陽子は少年らしい色白な頸窩や、根気よい指先を見下しながら、内心の思いに捕われていた。その朝彼女の実家から手紙を貰った。純夫が陽子の離籍を承諾しない事、一人の女が彼の周囲にあるらしいことなど告げられたのであった。純夫に恋着を失った陽子にそんな・・・ 宮本百合子 「明るい海浜」
・・・〔欄外に〕五十年来という大雨○小野 酒をのむ、色白、一寸腰のかがめかたなどくにゃりとし「おやかましゅう」という。○山岡 皮膚のうすい黒い肥り、髪濃く、まつ毛も黒く濃い。動物、舌たるいような口のききよう。発句、釣、・・・ 宮本百合子 「一九二五年より一九二七年一月まで」
・・・桃色ろの半襟 色白、 四つの子供 楠生 ○七つになる姉 やっと覚えた片仮名で クソオ とかく 呼ぶのもクソオさん ○頬っぺた高くふくれて居るが手など細く弱々し。 ○坊や たべるの たべゆの ○カキクケ・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
・・・うちにもちょくちょく遊びに来る、色白な、下膨れの一寸愛らしい娘であった。先頃、学校を出たまま何処に居るか、行方が不明になったと云って、夜中大騒ぎをしたことがある。それも、病気を苦にして、休みたかったのだったそうだが、今度は、愈々腹膜になって・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・手色白シ。議論ニ熱中シタ時ニ親指ヲ立テテ拳固ヲ握ル癖アリ」等々。 今はイタリーからソヴェト同盟に帰って党員となり、老年にかかわらず熱心にソヴェト同盟の社会主義建設に努力しているマキシム・ゴーリキイも室内檻禁にあったことがある。むずか・・・ 宮本百合子 「ロシアの過去を物語る革命博物館を観る」
出典:青空文庫