・・・ イムベルのところ フランスの色調、トミスという犬、 ジェリンスキー、構成派のクリチク アメリカに行きたい アメリカの New インテリゲンチャの好奇心。動、強さ、新しき文学 彼等の生活力、テ・・・ 宮本百合子 「一九二七年八月より」
文学の分野においても、本年の初頭から民衆と知識階級との社会関係の再吟味がとりあげられて来ている。しかし、そのとりあげられかたは一種独特な色調を帯びていて、例えば、『文学界』の同人達によって喧しく提案された文壇否定、従来の意・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
・・・昔の矢部さんの絵は、色調において暗かったし、テーマもパセティックであって、奇麗な絵ではなかったかも知れませんけれども、私の心には今日なお刻まれている画面もあります。人生の現実、社会の歴史の現われ方がパセティックなものにばかり焦点を見るという・・・ 宮本百合子 「第一回日本アンデパンダン展批評」
・・・しかも、長谷川如是閑氏が参加していることや、会則も綱領もないということなどは、何か質的に変化がもたらされたような誤解を一般に与え得、たしかに文芸懇話会よりは、時代的色調において一進しているのである。 日本がその現実の歴史に即して周密に探・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・いろいろの形で彼を動かし又彼が動いたような動きの本質が、日本文学に入って来ていて、それはやはり現代文学の流れに或る色調を加えたものである。将来の文学の流れに流れ入る一つの要素となっているのである。 火野葦平は、帰って来たときすぐ朝日新聞・・・ 宮本百合子 「地の塩文学の塩」
・・・よかれ、あしかれそれがその自伝小説のつよい色調をかもし出し特徴の一つをなしている。ただ貧農の娘の階級的立志伝ではない強烈な、不安な、燃え顫える光線が体にかかって来るような感じを与える。そして、その殆ど猛烈な波動は、その時代のアグネスの内部に・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・また色彩の上から言っても、油絵の具は色調や濃淡の変化をきわめて複雑に自由に駆使し得るが、日本絵の具は混濁を脱れるためにある程度の単純化を強要せられているらしく思われる。――これらの性質は直ちにまた画布の性質に反映して、その特質を一層強めて行・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
・・・その鈍色はいかにも高貴な色調を帯びて、子供の心に満悦の情をみなぎらしてくれる。そうしてさらに一層まれに、すなわち数年の間に一度くらい、あの王者の威厳と聖人の香りをもってむっくりと落ち葉を持ち上げている松茸に、出逢うこともできたのである。・・・ 和辻哲郎 「茸狩り」
・・・本郷の大学前の通りなどは、たとい片側だけであるにもしろ、大学の垣根内に大きい高い楠の樹が立ち並んでいて、なかなか立派な光景だといってよいのであるが、しかしそれさえも、緑の色調が陰欝で、あまりいい感じがしなかった。大学の池のまわりを歩きながら・・・ 和辻哲郎 「京の四季」
・・・それが作の世界全体に叙情的な色調を与えるゆえんなのであろう。 私はこの態度が作者として取るべき唯一の道だとは思っていない。ありのままを卒直に言おうとする態度の人、物を言い切る人、人の気を兼ねるということをしない人でも、その態度によってひ・・・ 和辻哲郎 「藤村の個性」
出典:青空文庫