・・・護憲運動のあった時などは善良なる東京市民のために袋叩きにされているのですよ。ただ山の手の巡回中、稀にピアノの音でもすると、その家の外に佇んだまま、はかない幸福を夢みているのですよ。 主筆 それじゃ折角の小説は…… 保吉 まあ、お聞き・・・ 芥川竜之介 「或恋愛小説」
・・・チョッ、べら棒め、サーベルがなけりゃ袋叩きにしてやろうものを、威張るのもいいかげんにしておけえ。へん、お堀端あこちとらのお成り筋だぞ、まかり間違やあ胴上げして鴨のあしらいにしてやらあ」 口を極めてすでに立ち去りたる巡査を罵り、満腔の熱気・・・ 泉鏡花 「夜行巡査」
・・・ それならまだしも浮浪者より気が利いていると思ったが、「闇屋の天婦羅屋イはいって食べたら、金が足らんちゅうて、袋叩きに会いましてん。なんし、向うは十人位で……」「ふーん。ひどいことをしやがるな。――おい、餅が焼けた。食べろ」・・・ 織田作之助 「世相」
出典:青空文庫