・・・前に季節の事に言及した時に引いたから、ここに書いて置くが、勿論大した意味がある訳ではない。――さて、その問答を見ると、大体下のような具合である。 上人「御主御受難の砌は、エルサレムにいられたか。」「さまよえる猶太人」「如何にも、眼の・・・ 芥川竜之介 「さまよえる猶太人」
・・・於てはこれからさき少しお読みになれば判ることでありますが、女房コンスタンチェひとり、その人についての描写に終始して居り、その亭主ならびに、その亭主の浮気の相手のロシヤ医科大学の女学生については、殆んど言及して在りません。私は、その亭主を、仮・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・告白の限度という事にも言及しました。ふい、ふいと思いついた事を、てれくさい虫を押し殺し押し殺し、どもりながら言いました。自己暴露の底の愛情に就いても言ってみました。しばらく言っているうちに、だんだん言いたくなくなりました。話が、とぎれてしま・・・ 太宰治 「みみずく通信」
・・・ 儒教は政治と道徳とを説くに止って、人間死後のことには言及んでいない。儒教はそれ故宗教の域に到達していないものかも知れない。しかしこの問題については、わたくしは確乎とした考を持っていない。今日に至るまでこれを思考することができなかったと・・・ 永井荷風 「西瓜」
・・・を通じてわれらに客観的真理の概括を与えるところの、明確な政治的把握あるのみであることに言及していない。この問題の具体的な、日常的な解決は、とりもなおさず、芸術における政治の優位性に対する正しい階級的理解なしにはあり得ないのである。鈴木清はこ・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・所得税の問題、物価問題、人種問題などを漠然ととりあげていたトルーマンは、今やタフト・ハートレー法の非民主性について演説し、世界ファシズムに反対し、強国間の協力の可能について言及しなければならなくなった。ウォーレスの政策の一部をトルーマンの演・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・その友達が、お手紙有難うと云ったぎりで、あのエクサイティングな紙については一言も言及してくれないのが、非常に物足りなかった。何もわからない人なのだという、軽い侮さえ抱いた。とめのもそれに似たような気持――年のゆかない娘の仕業らしく、まるめた・・・ 宮本百合子 「木蔭の椽」
・・・或る男が没落して、私が作家同盟の或る同志に個人的に貸した金のことに言及した。金、金と云われるのはそのことなのであった。 二日ばかりかかって書類に一段落つくと、中川は、「ところで、愈々将来の決心だが……」と、睨むように私を眺め・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・し、大阪、高知、長野等拡大中央委員会にわざわざ代表が出席した程比較的強力な支部からの報告でさえ、その中には一言も、支部に於ける婦人委員会の問題、婦人大衆に対する文学的働きかけについての対策というものは言及されていなかった。 これは作家同・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・その本に序文を書いておられる有名な倉敷労働科学研究所の暉峻義等氏でさえ、著者がその点にふれていないことには言及しておられないのである。 成年の女に月経は自然の現象ではあるけれども、現代の労働の或る種のものは、その自然現象に阻害を与えるよ・・・ 宮本百合子 「職業婦人に生理休暇を!」
出典:青空文庫