・・・は純学術的よりはむしろより多く経済的なものであって、それも単にロシアの氷海を太平洋に連絡させるというのみでなく、莫大な富源の宝庫ヤクーツクの関門と見るべきレナ河口と、ドヴィナ湾との間に安全な定期航路を設定しようというのだそうである。 映・・・ 寺田寅彦 「北氷洋の氷の割れる音」
・・・を共有する一つの集団の普遍性を抽象してその集団の「型」を設定する事になる。こういう対象の取扱い方は実に科学者がその科学的対象を取扱うのと著しく類似したものである。 例えば物理学者があらゆる物体の複雑な運動を観察して、これを求心運動、等加・・・ 寺田寅彦 「漫画と科学」
・・・しかし、もしこういう明白な意識を設定した上でその創作をするとすれば、かなり新しくておもしろい試みがいくらも行なわれうるのではないかと思われるのである。 ただ一つラジオの場合に他の場合と区別しなければならない本質的の相違のある点は、ラジオ・・・ 寺田寅彦 「ラジオ・モンタージュ」
・・・ 六 月花の定座の意義 連句の進行の途上ところどころに月や花のいわゆる定座が設定されていて、これらが一里塚のごとく、あるいは澪標のごとく、あるいは関所のごとく、また緑門のごとく樹立している。これは連句というものの・・・ 寺田寅彦 「連句雑俎」
・・・封建的な人間性の否定に抗すると同時に、その意欲と行動との統一された表現として、歴史はすでにはっきりと、資本主義の社会の混乱と矛盾とにたいして合理的処置を主張する勤労大衆の民主的要素が正当であることを設定しているのである。 ルネッサンス時・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・安価なフィクションとよみもの的な情景の設定で、人間の悲痛を猟奇にすりかえてしまっている。 勤労者としての生活を営んでいる人々の「文学ずき」が、同じく現代文学におこっているなだれの下じきになっている。そして「細雪」は「天然色映画のようにた・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・を求めている当時の文壇の気運は、従来の日本文学の現れに見なかったほど夥しい「賞」を設定して、新人の登場を励ました。文芸春秋社主催の芥川賞、直木賞。文学界賞、三田文学賞、池谷信三郎賞等。やはりこれも時代の特徴の一つとして数えられることは、これ・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・のような成功した例外のほかの多くの和田の作品は、その農民心理が我執とか所有欲などを本能にまで還元された上で、その葛藤を特定の条件によって設定して、その筋の上に発展させられている。なお、考えさせられることは、作者の人間に対して抱いている観念そ・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・小松清氏はアンドレ・ジイドのメッセージの一節「今日、ソヴェトは文学なり芸術なりの領域において、コムニスト的個人主義を設定することに努めなければならない」という言葉を結語として「われわれの主張する全的人間性の観念の上に立った個人主義」を、日本・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・エレンブルグは、その気質、年齢、外国生活のながい経験などによって、アメリカの社会生活と自分との関係を一定の規準で設定する技術をもっている。コンスタンチン・シーモノフは旺盛な三十歳という年齢、彼の感性的な素質、経験の追求、観察の追求における作・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
出典:青空文庫