・・・第二、読本 もっとも易き文章にて諸学の手引、初歩ともなるべき事を説き、あるいは『モラルカラッスブック』などとて、脩心学の入門を記したる小冊子も、読本の内にあり。たいてい絵入りなり。この時また文法書を学ぶ。文法を知らざれば、書・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・理学初歩 価一分一朱義塾読本文典 価一分和英辞書 価三両二歩地理書 ┌一部に付窮理書 ┤弐両より歴史 └四両まで 右にて初学より一年半の間は不自由なし。このほかに・・・ 福沢諭吉 「慶応義塾新議」
・・・ちょうど小学校の読本の村のことを書いたところのようにじつにうそらしくてわざとらしくていやなところがあるのだ。けれどもぼくのはほんとうだから仕方ない。ぼくらは空想でならどんなことでもすることができる。けれどもほんとうの仕事はみんなこんなにじみ・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・「五年生の人は読本のページの課をひらいて声をたてないで読めるだけ読んでごらんなさい。わからない字は雑記帳へ拾っておくのです。」五年生もみんな言われたとおりしはじめました。「一郎さんは読本のページをしらべてやはり知らない字を書き抜いて・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・私はそれをこちらの小学校の読本にも入れさせました。さて今度はとんだ災難で定めしびっくりなさったでしょう。」 チュンセ童子が申しました。「これはお語誠に恐れ入ります。私共はもう天上にも帰れませんしできます事ならこちらで何なりみなさまの・・・ 宮沢賢治 「双子の星」
・・・『国のあゆみ』『民主主義』読本に対する監視と批判は、決して新学期に際してだけの季節的行事であってはならないと思います。今日二・二六の事件を戦争を欲しなかった青年将校の行動であるとか、農民大衆の窮乏にふるいたった青年将校たちの行動であるとかい・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ 更に、新聞も御用大新聞に整理することに成功し『くにのあゆみ』から『民主主義』読本を文部省が発行できるように日本の民主化が歪曲されて来るにつれて、吉田茂は、とうとう、日本人の大部分が満足していない国会を、外国の新聞がほめている、というよ・・・ 宮本百合子 「「委員会」のうつりかわり」
・・・ 机に向って、何か読本を読んでいらっしゃった先生は、芳子さんが入って来るのを御覧に成ると、椅子からお立ちに成って「あちらへ行きましょう」と、傍の扉をお開けになりました。 其処は、ふだん使わない部屋で、参観人が、ちょっと休んだ・・・ 宮本百合子 「いとこ同志」
・・・その本は読本、書本、人情本の三種を主としていた。読本は京伝、馬琴の諸作、人情本は春水、金水の諸作の類で、書本は今謂う講釈種である。そう云う本を読み尽して、さて貸本屋に「何かまだ読まない本は無いか」と問うと、貸本屋は随筆類を推薦する。これを読・・・ 森鴎外 「細木香以」
・・・唯識を自在に講釈するだけの力のある安国寺さんだから、それを丁度尋常の人が Fibel や読本を解するように解した。F君はこの流義を踏襲することを肯ぜずに、安国寺さんに語格から教え込もうとした。安国寺さんは全く違った方面の労力をしなくてはなら・・・ 森鴎外 「二人の友」
出典:青空文庫