・・・私欲のために謀殺される。窮迫のために自殺する。今の人間の命の火は、油がつきて滅するのでなくて、みな烈風に吹き消されるのである。わたくしは、いま手もとに統計をもたないけれど、病死以外の不慮の横死のみでも、年々幾万にのぼるか知れないのである。・・・ 幸徳秋水 「死刑の前」
・・・も達せずして紛々として死に失せるのである、独り病気のみでない、彼等は餓死もする、凍死もする、溺死する、焚死する、震死する、轢死する、工場の器機に捲込れて死ぬる、鉱坑の瓦斯で窒息して死ぬる、私慾の為めに謀殺される、窮迫の為めに自殺する、今の人・・・ 幸徳秋水 「死生」
・・・彼らは国家のためにするつもりかも知れぬが、天の眼からは正しく謀殺――謀殺だ。それに公開の裁判でもすることか、風紀を名として何もかも暗中にやってのけて――諸君、議会における花井弁護士の言を記臆せよ、大逆事件の審判中当路の大臣は一人もただの一度・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
出典:青空文庫