・・・「僕は近々上海の通信員になるかも知れない。」 彼の言葉は咄嗟の間にいつか僕の忘れていた彼の職業を思い出させた。僕はいつも彼のことをただ芸術的な気質を持った僕等の一人に考えていた。しかし彼は衣食する上にはある英字新聞の記者を勤めている・・・ 芥川竜之介 「彼 第二」
・・・、泉鏡花の「外国軍事通信員」等を見ても、その水っぽさと、空想でこしらえあげたあとはかくすべくもない。だが、それらの一つ一つの各作家に於いても、あまりに重要でない作品に対して吟味を与えることは、恐らくそう必要ではなかろう。それよりは、一九三一・・・ 黒島伝治 「明治の戦争文学」
・・・しかしそれよりもこの人に感心したのは氏が先年H子夫人と同伴で洋行したときに、パリ在住の通信員によって某紙上に報ぜられたこの夫妻の行動に関する記事を読んだときである。パリのまん中でパリジャンを「異人」と呼び、アンバリードでナポレオンの墓を見て・・・ 寺田寅彦 「試験管」
・・・ 今年の正月にノースクリッフ卿がコロンボでタイムスの通信員に話した談話の中に、「東洋の新聞の中では日本のがいちばん信用ができる。ただしいわゆる『第三面』として知られた notorious scandal のためにそこなわれてはいるが」と・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・そしてバタ生産に関する農村通信員の面白い批判が掲載されている。バタ工場の支配人を代えろ!バタ工場上ナザロフスキーの支配人ゴルデーエフは生産に従事することを欲していない。工場は無管理状態に君臨されている。工場が燃料に欠乏を感じ・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・労農通信員の問題も、現在の日本の民主的文化運動の中では、その重要性が十分理解されていない。日本の民主的な文化、文学運動をより発展させるために有益なモメントがいくつか発見されるという意味からも、こんにち、これらのソヴェト報告は生々とした価値を・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
・・・案内の若い、労働通信員をしている技師と工場内の花の咲いたひろい通路を歩いていたら、こっちでは電熱炉で鉄を溶かしている鍛冶部の向い側のどこかで、嬉しそうなピアノの音がしはじめた。「セルマシストロイ」は巨大工場で未完成だ。各部がまだクラブを・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェト同盟の文化的飛躍」
・・・ 職場の壁新聞・工場新聞は、三十万人の労働通信員、農村通信員に意見発表の機会を与えているばかりではない。やっと二年前に文字を書くことを覚えた六十の婆さんに向っても、開放されている。工場内には、はじめ、極く日常の出来事に関する感想を壁新聞・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・かえし、プロレタリア文学の中に解放運動における婦人大衆の独特な歴史的実践が階級全体の闘争との生々しい連関においてもっともっと隈なく描かれるように、婦人のプロレタリア・農民作家がドシドシ文学サークル員・通信員の中から養成されるように、日本プロ・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・ゆたかな声量と生粋のソヴェト人の歌好きのこころで「前線通信員」の活気横溢する歌をうたう、ゴルバートフ。一九一七年以後に成長して、社会主義建設の中で青年となった新しい気質のソヴェト作家が、あらゆる人々とともにナチスに侵略された自分たちの建設祖・・・ 宮本百合子 「ゴルバートフ「降伏なき民」」
出典:青空文庫