・・・ブランコや遊動円木などのあるところへ出た。「あたし乗ってみようかしら? 夜だからかまやしないことよ……」と浪子夫人が言いだした。「あぶないあぶない! それにお前なんかは乗れやしないよ」Tはとめた。「でも、あたし乗ってみたいんですもの・・・ 葛西善蔵 「遊動円木」
・・・「奥の用箪笥が、遊動円木の傍に出て、ごちゃごちゃになって居ます。と云う。 私はハット思った。 さてこそ、到頭入ったな? 頬かぶりで、出刃を手拭いで包んだ男が、頭の中を忍び足で通り過ぎた。 私は大いそぎで、まだカー・・・ 宮本百合子 「盗難」
・・・ パサパサな髪を頭の後でポコッと丸めて、袴を穿いたなりで、弟達と真赤になって、毬投げをするかと思えば、すっかり日が落ちて、あたりがぼんやりするまで木の陰の遊動円木に腰をかけて夢中になって物を読んで居たり、小さい子の前にしゃがんで、地面に・・・ 宮本百合子 「二十三番地」
出典:青空文庫