・・・それも、大将とか、大佐とかいうものなら、立派な金鵄勲章をひけらかして、威張って澄ましてもおられよけど、ただの岡見伍長ではないか? こないな意気地なしになって、世の中に生きながらえとるくらいなら、いッそ、あの時、六カ月間も生死不明にしられた仲・・・ 岩野泡鳴 「戦話」
・・・ 五「今度こそ、俺れゃ金鵄勲章だぞ。」 銃をかついで、来た道を引っかえしながら軍曹は、同僚の肩をたたいて笑った。彼は、中隊長の前で、三人の逃げ出そうとするパルチザンを突き殺した。それが、中隊長の眼にとまった自・・・ 黒島伝治 「パルチザン・ウォルコフ」
・・・その前年の明治三十九年に、功三級に叙せられ、金鵄勲章を授けられ、また勲二等に叙せられ、旭日重光章を授けられているのである。自重しなければならぬ人であったのに、不良少年じみた新聞記者と、「何故今遣らないのだ。」「うむ。遣る。」 な・・・ 太宰治 「花吹雪」
・・・ こうして平壌は占領され、原田重吉は金鵄勲章をもらったのである。下 戦争がすんでから、重吉は故郷に帰った。だが軍隊生活の土産として、酒と女の味を知った彼は、田舎の味気ない土いじりに、もはや満足することが出来なかった。次第・・・ 萩原朔太郎 「日清戦争異聞(原田重吉の夢)」
○床の間の上の長押に功七級金鵄勲章の金額のところはかくれるような工合に折った書類が 茶色の小さい木の椽に入ってかかっている、針金で。○大きい木の椽に、勲八等の青色桐葉章を与う証が入っている。「三万五千五百八十四号ヲ以・・・ 宮本百合子 「Sketches for details Shima」
出典:青空文庫