・・・かつて長谷川如是閑氏は、個人的感情を階級の義務の前に殉ぜしめることを主題としたプロレタリア文学に対して、「新しいつもりか知らぬが、義理のしがらみに身をせめられる義太夫のさわりと大差ない」という意味の評をしたことがある。私はその言葉を心に印さ・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・かつて保護観察所長をしていた思想検事の長谷川劉が、現在最高裁判所のメムバーであって、さきごろ、柔道家であり、漫談家、作家である石黒敬七、富田常雄などと会談して、ペン・ワン・クラブというものをつくることを提案している。名目は、腕力のあるペン・・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・ 彼の死を、長谷川如是閑のように、理智と本能の争いの結果とも見得るし、内的の力の消長の潮流の工合とも見られるのだ。 自分にとって、波多野氏の方から誘惑したとかどうとか云うことは窮極の問題ではない。誘惑と云うものは、あって無いものだ。・・・ 宮本百合子 「有島武郎の死によせて」
・・・この作家や橋本正一氏、長谷川一郎氏その他によって発刊されている『文学建設』の新年号を、これを書くまでに手に入れることができなかったのを遺憾に思う。『文学建設』を中心とする活動家は、座談会の記事を見てもあきらかであるとおり、もっとも文学的技術・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・何しろ文学を愛する奴なんぞは、くたばってしまえと親爺から怒鳴られた思い出によって、長谷川辰之助は二葉亭四迷という筆名をつけたというような時代であった。 二葉亭の苦悩は、文学というものがもし現在自分のぐるりに流行しているような低俗なもので・・・ 宮本百合子 「生活者としての成長」
・・・そして長谷川如是閑氏や吉野作造氏の序文がついていることから、当時は全くわからなかったが、その井口という人が新人会初期の時代に青年期を生活した人であったことを理解し、当時の進歩的であった大学生の生活と今日の急進的学生の生活内容との間にある違い・・・ 宮本百合子 「生活の道より」
・・・ こう語って長谷川如是閑氏の「日本的性格」にふれると、さながら、そういう危険にさらされている著述の代表のように思われて著作にすまないようだけれど、この本はおそらく興味をひくその書名からも随分広汎に読まれている本だろうと思う。従って、この・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
長谷川時雨さんの御生涯を思うと、私たちは、やっぱり何よりも女性の多難な一生ということを考えずには居られなくて、最後までその道の上に居られた姿を、深く悼む心持です。 明治の濃い匂りの裡に成長して、大正、昭和と今日までの激・・・ 宮本百合子 「積極な一生」
・・・しかも、長谷川如是閑氏が参加していることや、会則も綱領もないということなどは、何か質的に変化がもたらされたような誤解を一般に与え得、たしかに文芸懇話会よりは、時代的色調において一進しているのである。 日本がその現実の歴史に即して周密に探・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・ 有馬さとえ氏その他、それぞれの力量を示す作品を出品しているのではあろうが、面白かったのは版画の長谷川多都子氏の作ぐらいであった。日本画では理解が皮相的な憾みはあるが「煙草売る店」青柳喜美子、「夕」三谷十糸子、「娘たち」森田沙夷などは、・・・ 宮本百合子 「帝展を観ての感想」
出典:青空文庫