・・・けれどもそれは盲目の道徳、醒めない道徳たるに過ぎぬ。開眼して見れば、顔を出して来るものは神でも仏でもなくして自己である。だから自己がすなわち神である仏である。 しかしこんなことは畢竟ずるに私の知識の届く限りで造り上げた仮の人生観たるに過・・・ 島村抱月 「序に代えて人生観上の自然主義を論ず」
・・・夫唱婦随が美俗とされるところでは、夫の唱える知性の流れがどのように低い川底を走っていなければならないかということに新鮮なおどろきと悲しみの眼を瞠ったとき、婦人の知性の開眼はおこなわれるのであるとさえ思うのである。〔一九三九年八月〕・・・ 宮本百合子 「知性の開眼」
・・・レオナルド・ダ・ヴィンチは、ルネッサンス時代の新鮮旺盛にめざめた科学への開眼で、その人種のあこがれを科学の力で実現してみようとした。前後いくつもの世紀を経て、人類の科学的能力はとうとう、航空機製作というものを最も大規模な近代的産業部門の一つ・・・ 宮本百合子 「なぜ、それはそうであったか」
出典:青空文庫