・・・ キュリー夫人などが居るではないかという抗議に対しては、「そういう立派な除外例はまだ外にもあろうが、それかといって性的に自ずから定まっている標準は動かされない。」 モスコフスキーは四十年前の婦人と今の婦人との著しい相違を考えると・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・ 汽船会社は無論乗客の無聊を慰めるために蓄音機を備えてあるので、また事実上多数の乗客は会社の親切を充分に享楽しているでもあろうが、これがために少数の「除外例」が受ける迷惑も少しは考慮の中に加えてもらいたいと思った事も幾度あったかわからな・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
・・・人間性というものを出来るだけ除外しようという傾向からすればこれは当然な事であるが、芸術ではこの点は勿論ちがう。おのおのの画家はそれぞれの系統を有し、そのおのおのが事実であり真実でありしかも互いに矛盾しないところが面白くまた尊いところであろう・・・ 寺田寅彦 「津田青楓君の画と南画の芸術的価値」
・・・日本画部では好きなのが除外例であるのに反して洋画部では悪い方のが特に眼につく。これは私固有の趣味から生じる差別かもしれないがどうする事も出来ない。 ただ不思議に思われるのは、今でもあの単に道徳上の功利的価値だけを目標とした歴史画や、最も・・・ 寺田寅彦 「帝展を見ざるの記」
・・・しかして多少の除外例はあるにしても、だいたいにおいて長い間隔の後には比較的混雑した車が来る事、短い間隔の後にはすいた車が来る事がわかるだろう。 今これら各種の間隔の頻度について統計してみると次のとおりである。四分以上 4回・・・ 寺田寅彦 「電車の混雑について」
・・・北海道や朝鮮台湾は除外するとしても、たとえば南海道九州の自然と東北地方の自然とを一つに見て論ずることは、問題の種類によっては決して妥当であろうとは思われない。 こう考えて来ると、今度はまた「日本人」という言葉の内容がかなり空疎な散漫なも・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・季題のない発句はまれにはあるとしてもそれは除外例である。二条良基は連歌の句々の推移のありさまを浮世の盛衰にたとえ、また四季の運行に比べている。これは気候変化の諸相のきわめて複雑多様な日本の国土にあって、この変化に対する敏感性を養われて来た日・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・また「除外例」というもののある事から起こる困難は、統計的方法の利器によって、少なくもある度まで救われうる見込みがある。これについては、さらに、機会があったら、いくぶん具体的に考えを進めてみたいという希望をもっている。 最後に誤解のないた・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・もっとも自分のような閑人はおそらく除外例かもしれないから、まず大多数の人はかなり迷惑を感じたものと見たほうが妥当には相違ない。 まずだれよりもいちばん迷惑を感じたのは新聞社自身であったろうが、ここではそれは問題に入れるわけには行かない。・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・それで、地上三メートルの高さから水平に発射されたとして十メートルの距離において地上一メートルの点で障子に衝突したとすれば、空気の抵抗を除外しても、少なくも毎秒十メートル以上の初速をもって発射されたとしなければ勘定が合わない。あの一見枯死して・・・ 寺田寅彦 「藤の実」
出典:青空文庫