・・・先生は此有様を見て恰も強有力なる味方を得たるの思いして、愉快自から禁ずる能わざると同時に、又一方を顧みれば新条約実施の期限は本年七月と定まり、僅々一年の後には外国人も内地に雑居して日本人と郷党隣人の交際を為すに至る可しと言う。従来の儘なる我・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・いずれにせよ、仙二はこの経験で、彼女を隣人として持つことは、どのような手数、心の重荷――厄介かということを知ったのであった。 青年団の寄合で、村会議員の清助に会った時、彼はざっくばらんに自分の意見を話した。「どんなもんだべ、俺、まだ・・・ 宮本百合子 「秋の反射」
・・・ 婆さんは、偶然の隣人である私の風体を暫く観察していたが、いきなり云った。「源坊、あぶないよ」 女は、遠い改札口の方をぼんやり眺めたなり鸚鵡返しに、「あぶないよ本当に」と、傍に立って車窓を見上げている六ツばかりの男の児の・・・ 宮本百合子 「一隅」
出典:青空文庫