・・・全存在において理解し、新日本文学会の運動をブルジョア文壇のしきたりから解放されたまるで違った人民の文学建設のための統一的な運動としてつかんだ時、文学者生活と人民生活とのブルジョア文学にあらわれたような離反においては考えられないと思います。だ・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・重吉もひろ子も、劣らず自然なままの生れつきであったから、一方で離反して、一方で繋がれてゆくというようなゆがんだ人工の夫婦暮しは出来なかった。真実重吉の幻滅がとりかえせないものならば、それはひろ子にとっても、これからの生活は成り立たないという・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・ 晩年のトルストイとトルストイ夫人との間に生じた悲劇的な離反は有名である。ゴーリキイがトルストイの所へ出入りするようになった時にはもうこの徴候が充分きざしていた。「女に対して彼は、私の見るところ妥協し難い敵意を持ち、それを罰することが好・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人」
・・・允子は何故、子供は生れたとき既に自分から離れていたのだ、と諦観する前に、抑々人間の本質的な離反とはどういうものかと考えなかったのだろう。人間交渉に真実を目ざすのが特質であるこの作者が、どうして、允子の自分の子ばかりとりかえそうとするエゴイス・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・しかしながら漱石は当時の社会的・個人的な環境によって女のもつ自我の内容、発露の質と、男のもつ自我の本質・形態との間に、裂けて再び合することないかのように思わせる分裂、離反、相剋を見出している。作品のテーマをなす知識人の人間苦として、深刻な凝・・・ 宮本百合子 「歴史の落穂」
・・・けれども、思想の上から見ると、これ等、殆ど悲劇的な離反の大部分は皆各自の生活を、悠久な人類の歴史的存続というところまで溯らせて考察する明に欠けているからと思われるのです。 多くの人間は永くて自分と子との一生ほか、生活意識の延長として持ち・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
出典:青空文庫