・・・勝つ者は青史の天に星と化して、芳ばしき天才の輝きが万世に光被する。敗れて地に塗れた者は、尽きざる恨みを残して、長しなえに有情の人を泣かしめる。勝つ者はすくなく、敗るる者は多い。 ここにおいて、精神界と物質界とを問わず、若き生命の活火を胸・・・ 石川啄木 「初めて見たる小樽」
・・・陸放翁のいったごとく「我死骨即朽、青史亦無名」と嘆じ、この悲嘆の声を発してわれわれが生涯を終るのではないかと思うて失望の極に陥ることがある。しかれども私はそれよりモット大きい、今度は前の三つと違いまして誰にも遺すことのできる最大遺物があると・・・ 内村鑑三 「後世への最大遺物」
・・・武士道の第一条件、二千五百年の青史はあらゆるページにこの華麗なる波紋の跡を残す。君は絶対の権威を持ってその前には人間の平等なく思想の自由がない。肉体に黄金に狂的執着なす者も「君のため」にはこれを超越した。そこに義の人ができる。しかしながら因・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫