・・・「法令が適正に運用されているかどうかを注意し、いやしくも非道、不正を発見したときにはこれが是正につとめなければならない。これは個人の被告人がいかなることをしたかということを離れて、公の公共的な立場において国家のために監視しなければならない。・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・日本の恐怖すべき絶対制は、この場合にも、社会生活に伴う階級性について、またその階級の歴史性について語らせなかった。非道な権力がそれを語らせなかったとともに、人民戦線の提示の場合ナチス的な封建性と近代民主主義の対立の歴史的な必然を消してしまっ・・・ 宮本百合子 「誰のために」
・・・同志小林多喜二は当時支配階級が革命的労働者に対して行った非道な白テロを曝露し、革命の犠牲と挫けぬ意気とを「一九二八年三月十五日」という作品にもり上げた。 この一作で、同志小林多喜二のプロレタリア作家としての方向が決ったといえる。・・・ 宮本百合子 「同志小林多喜二の業績」
・・・ブルジョアジーにとって脅威であった民衆の擡頭は、ブルジョアジーが貴族に対して擡頭したのと同じこと、否、貴族に代って権力を把り、貴族の行った総ての悪行を更に小型に没趣味に多数に再生産したブルジョアの醜行非道を、一層卑穢に而も下層階級の夥しい人・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・十月十日に、同志たちが解放される前後を中心として、治安維持法と、その非道な所業、その法律の撤廃を描いた映画であった。山本宣治を殺して出来た治安維持法が、小林多喜二を虐殺し、渡辺政之輔その他たくさんの人々を犠牲とした。小林多喜二が命を失ったと・・・ 宮本百合子 「風知草」
・・・中世の女性達は女としての奇智の限りを尽して、非道な奪掠者と闘った。そして自分の愛の純潔と夫への忠実を守った。 このようないきさつは、日本の中世の武家社会にやはり少くなかった。例えば袈裟御前の物語がある。一人の武家の婦人が生命を賭さなけれ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫