一 数日前本欄に出た「自己主張の思想としての自然主義」と題する魚住氏の論文は、今日における我々日本の青年の思索的生活の半面――閑却されている半面を比較的明瞭に指摘した点において、注意に値するものであった。け・・・ 石川啄木 「時代閉塞の現状」
・・・とにする。豹吉やお加代や亀吉がやがて更生して行くだろう経過、豹吉とお加代、そして雪子との関係、小沢と道子の今後、伊部の起ち直りの如何……その他なお述べるべきことが多いが、しかしそれらはこの「夜光虫」と題する小説とはまたべつの物語を構成するで・・・ 織田作之助 「夜光虫」
・・・、なるほど加藤男の彫像に題するには何よりの題目だろう、……男爵は例のごとくそのポケットから幾多の新聞の号外を取り出して、「号外と僕に題するにおいて何かあらんだ。ねえ、中倉さん、ぜひ、その題で僕を、一ツ作ってもらいたい。……こんなふうに読・・・ 国木田独歩 「号外」
・・・という海の妖怪などを好んでかく画家の事は、どなたもご存じの事と思う。あの人の画は、それこそ少し青くさくて、決していいものでないけれども、たしか「芸術家」と題する一枚の画があった。それは大海の孤島に緑の葉の繁ったふとい樹木が一本生えていて、そ・・・ 太宰治 「十五年間」
フィッシンガー作「踊る線条」と題するよほど変わった映画の試写をするからぜひ見に来ないかとI氏から勧められるままに多少の好奇心に促されて見に行った。プログラムを見ると、第五番「アメリカのフォクストロット」。第八番、デューカー・・・ 寺田寅彦 「踊る線条」
・・・とか題する時代劇であった。その中に、数人の浪士が、ちょこちょこと駆けずり回る場面がなんべんとなく繰り返される。なぜああいうふうにぎくしゃくした運動をしなければならないものかと思って見ているうちに、ふいと先刻見た熱帯魚を思い出した。スクリーン・・・ 寺田寅彦 「試験管」
・・・とのようにも思われる。 十八 「笑う」と「泣く」と 十余年前に「笑い」と題する随筆を書いたことがあって、その中で、緊張から弛緩に移る際に発生する笑いの現象について若干の素人考えを述べたのであった。今度前項で「泣く」現・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・とき自由な気持で読んでくれる読者とちがって自分の一番恐縮するのは小中学の先生で、教科書に採録された拙文に関して詳細な説明を求められる方々である。「常山の花」と題する小品の中にある「相撲取草」とは邦語の学名で何に当るかという質問を受けて困・・・ 寺田寅彦 「随筆難」
・・・ クーシューというフランス人は『アジアの詩人と賢人』と題する書物の一節において、およそ世界の中で日本人とアメリカ人と程にちがった国民は先ずないという意味のことを云っている。これには自分も同感であった。しかし事実において服装でも食物でも建・・・ 寺田寅彦 「チューインガム」
・・・と日本の自然との関係が各方面の諸家によって詳細に論述されている。読者はそれらの有益な所説を参照されたい。またその巻頭に掲載された和辻哲郎氏の「風土の現象」と題する所説と、それを序編とする同氏の近刊著書「風土」における最も独創的な全機的自然観・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
出典:青空文庫