・・・ 悍馬を慣らす顛末は、もちろん編集の細工が多分にはいってはいるであろうが、あばれるときのあばれ方はやはりほんとうのあばれ方で寸毫の芝居はないから実におもしろい。 この映画を見て、自分ははじめて悍馬の美しさというものを発見したような気・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(3[#「3」はローマ数字、1-13-23])」
・・・そうして、それに関するいろいろの空想を逞しくした顛末を随筆にかいたことがある。ところが最近のある晩TS君がやはり丸ビル附近でそれと全く同じような経験をした、と云って話したところによると、やはり同じような子供を背負っていたが、しかしその徒歩で・・・ 寺田寅彦 「雑記帳より(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・それを僅々数時間あるいはむしろ数分間の調査の結果から、さもさももっともらしく一部始終の顛末を記述し関係人物の心理にまでも立ち入って描写しなければならないという、実に恐ろしく無理な要求である。その無理な不可能な要求をどうでも満たそうとするとこ・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・神々が鏡や玉を作ったりしてあらゆる方策を講じるという顛末を叙した記事は、ともかくも、相当な長い時間の経過を暗示するからである。 記紀にはないが、天手力男命が、引き明けた岩戸を取って投げたのが、虚空はるかにけし飛んでそれが現在の戸隠山にな・・・ 寺田寅彦 「神話と地球物理学」
・・・ ところが現在の仮想的事件の場合においては、象が人間の言う事を聞かないから人間がおこった、それから象がおこったのであっても、その人間が仲間の人間にこの事件の顛末を話して聞かす時には、きっと象がおこった事実の記述のほうに念が入り過ぎて、つ・・・ 寺田寅彦 「解かれた象」
・・・ 古来の大火の顛末を調べてみるといずれの場合でも同様な運命ののろいがある。明暦三年の振袖火事では、毎日のように吹き続く北西気候風に乗じて江戸の大部分を焼き払うにはいかにすべきかを慎重に考究した結果ででもあるように本郷、小石川、麹町の三か・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・ 大概は勇ましくまた殺伐な戦闘や簒奪の顛末であるが、それがただの歴史とはちがって、中にいろいろな対話が簡潔な含蓄のある筆で写されていたり、繊細な心理が素朴な態度でうがたれていたりするのをおもしろいと思った。それから一つの特徴としては、王・・・ 寺田寅彦 「春寒」
・・・この夜の顛末の物語はなんとなくアラビアンナイトを思い出させるような神秘的なロマンチックな詩に満ちたものであったが、惜しいことに細かいことを忘れてしまった。「それから船便を求めてあてのない極東の旅を思い立ったが、乗り組んだ船の中にはもうち・・・ 寺田寅彦 「B教授の死」
・・・ 事の顛末を記録するためには先ずわが家のラジオの歴史を略記する必要がある。 東京で一般的放送が開始されて後も、しばらくの間は全く他所事のように何の興味も感じなかったので、自宅へ受信機を備えるどころか、他所のでちょっと聞いてみようとい・・・ 寺田寅彦 「ラジオ雑感」
・・・恥も糞もあるものかと思いさだめて、一気呵成に事件の顛末を、まずここまで書いて見たから、一寸一服、筆休めに字数と紙数とをかぞえよう。 そもそも僕が始て都下にカッフェーというもののある事を知ったのは、明治四十三年の暮春洋画家の松山さんが銀座・・・ 永井荷風 「申訳」
出典:青空文庫