・・・その中で頭の上の遠くに、菱の花びらの半ばをとがったほうを上にしておいたような、貝塚から出る黒曜石の鏃のような形をしたのが槍が岳で、その左と右に歯朶の葉のような高低をもって長くつづいたのが、信濃と飛騨とを限る連山である。空はその上にうすい暗み・・・ 芥川竜之介 「槍が岳に登った記」
・・・「この地図はどこで買ったの。黒曜石でできてるねえ。」 ジョバンニが云いました。「銀河ステーションで、もらったんだ。君もらわなかったの。」「ああ、ぼく銀河ステーションを通ったろうか。いまぼくたちの居るとこ、ここだろう。」 ・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・そしてそうだ、向うの崖の黒いのはあれだ、明らかにあの黒曜石の dyke だ。ここからこんなにはっきり見えるとは思わなかったぞ。よしうまい。〔向うの崖をごらんなさい。黒くて少し浮き出した柱のような岩があるでしょう。あれは水成岩の割・・・ 宮沢賢治 「台川」
出典:青空文庫