・・・もの足りなさは、それが未熟だからでも、稚拙だからでもなく、それどころか、どの作品も趣向はそれぞれにこらしてあって、手綺麗に色もとりどりであるけれども、そのあまりにも多くが、駅の売店につられている派手なセロファン人形だ、という、そのもの足りな・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・ヴァイオリン、セロと云う様なごく長い習練のいるものはどうしてもサークルにはより少くとり入れられるわけです。 ピオニェールはピオニェールで又自分たちの楽隊を持っている。われわれも一日も早く自分たちの音楽によってメーデーのデモをやりたいもの・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の音楽サークルの話」
・・・ わたしたちの間へ、ソヴェト同盟から手づくりのヴァイオリンやセロや太鼓をもった人々が帰って来た。人民の歌うべき歌は何であるか、そして、それはどのようにうたわるべきかということを学び知った人々だ。――ここに新しい世界史という芸術の展望があ・・・ 宮本百合子 「手づくりながら」
・・・作家会議 中国作家に課せられた重荷 第二回の文化擁護国際作家会議が去る七月四日からスペインで開かれたが、この会議がヴァレンシアからマドリッドに移り、更にヴァレンシアとバルセロナへ移動して、最後はパリに移ったこと・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ 彼はまた立ち停った。セロのガボットが華やかに日光室から聞えて来た。 ――しかし、よし譬え、明かに、事実は妻を死の中へ引き摺り込もうとしているとしても、果して、事実は常に事実であろうか。 ――嘘だ。と彼は思った。 彼は、総て・・・ 横光利一 「花園の思想」
出典:青空文庫