出典:青空文庫
・・・を聞きたしと待ちたりしが深間ありとのことより離れたる旦那を前年度の穴填めしばし袂を返させんと冬吉がその客筋へからまり天か命か家を俊雄に預けて熱海へ出向いたる留守を幸いの優曇華、機乗ずべしとそっと小露へエジソン氏の労を煩わせば姉さんにしかられ・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
エジソンの蓄音機の発明が登録されたのは一八七七年でちょうど西南戦争の年であった。太平洋を隔てて起こったこの二つの出来事にはなんの関係もないようなものの、わが国の文化発達の歴史を西洋のと引き合わせてみる時の一つの目標にはなる・・・ 寺田寅彦 「蓄音機」
・・・なさけない、メリケン国のエジソンさまもこのあさましい世界をお見すてなされたか。オンオンオンオン、ゴゴンゴーゴーゴゴンゴー」 風はますます吹きつのり、西の空が変に白くぼんやりなって、どうもあやしいと思っているうちに、チラチラチラチラとうと・・・ 宮沢賢治 「シグナルとシグナレス」
・・・ 神田では三省堂を出てから夜店の古本を見て十銭でエジソン伝など掘出し、あすこの不二家へよってコーヒーとお菓子をたべ、バスで高田の馬場までかえりました。おなかをすかして、とろろで御飯をたべ、それからお風呂に入って、二階へ上ったという順序で・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ アメリカからエジソンがソヴェト見学にやって来たとする。ゴーリキーがソレントから故郷へ客に来たとする。彼等の荷物にもちろんこんなソヴェト市民の旅行籠なんぞないにきまっている。 時間さえあったらエジソンは「学者の家」を訪問することをこ・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」