出典:青空文庫
・・・いい洋画を、たくさん持っている。ドガの競馬の画が、その中でも一ばん自慢のものらしい。けれども、自分の趣味の高さを誇るような素振りは、ちっとも見せない。美術に関する話も、あまりしない。毎日、自分の銀行に通勤している。要するに、一流の紳士である・・・ 太宰治 「水仙」
・・・戦前、ヴァレリーの「ドガに就て」を訳して、名訳といわれた吉田健一という名を思いおこすと、こんにちの「英国の文学」だの、父親の代弁として、ユーモアのないところに思想はなく、だから文学はないという風なくちのききかたも、何となく中間小説作家流の本・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・マネ、モネ、ピサロ、ルノアル、ドガ、シスレー、ギョーマン、バジールなどが集って、印象派の運動がおこっていた。マリアは、最後に自分のいのちを注いだ芸術の世界においてさえ、いわゆる貴族とサロンというくされ縁を切れなかったのだろうか。マリア自身の・・・ 宮本百合子 「マリア・バシュキルツェフの日記」