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・・・村上の御門第七の王子、二品中務親王、六代の後胤、仁和寺の法印寛雅が子、京極の源大納言雅俊卿の孫に生れたのは、こう云う俊寛一人じゃが、天が下には千の俊寛、万の俊寛、十万の俊寛、百億の俊寛が流されているぞ。――」 俊寛様はこうおっしゃると、・・・
芥川竜之介
「俊寛」
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・・・某をば妙解院殿御弟君中務少輔殿立孝公の御旗本に加えられ御幟を御預けなされ候。十五年二月廿二日御当家御攻口にて、御幟を一番に入れ候時、銃丸左の股に中り、ようよう引き取り候。その時某四十五歳に候。手創平癒候て後、某は十六年に江戸詰仰つけられ候。・・・
森鴎外
「興津弥五右衛門の遺書」