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・・・馬琴と相前後して居る作者には、山東京伝であれ、式亭三馬であれ、十返舎一九であれ、為永春水であれ、直接に当時の実社会を描き写して居るものが沢山ありますが、馬琴においては、三勝・半七を描きましてもお染・久松を描きましても、それをかなり隔たった時・・・
幸田露伴
「馬琴の小説とその当時の実社会」
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・・・世の諺にも話が下掛ってくるともう御仕舞いだという。十返舎一九の『膝栗毛』も篇を重ねて行くに従い、滑稽の趣向も人まちがいや、夜這いが多くなり、遂に土瓶の中に垂れ流した小便を出がらしの茶とまちがえて飲むような事になる。戦後の演芸が下がかってくる・・・
永井荷風
「裸体談義」