出典:青空文庫
・・・ 正宗白鳥は自然主義時代からの作家として今日も評論に小説に活動して一種の大御所のような風格をもった存在となっているのであるが「ひかげの花」について菊池寛の見解に反対した意見の中には、その矛盾においてなかなか教えるところがある。 菊池・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・ リオンスの作家観をもってすれば、芸術院へ入ることを正宗白鳥氏がことわったことも、藤村氏が辞退したことも、荷風氏が氏の流儀ではねつけたのも、悉くわけのわからないことになるのである。リオンスによれば「一般に作家というものは、だいいち人間が・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・ 坪内先生は非常に聰明な資質の先達者であった。正宗白鳥氏が先日、逍遙博士は文学の師であるばかりでなく生死に処する道を教えた方であるという感想を書いておられたが、私は坪内先生の一生をあるべきとこにあって完璧たらしめた先生の聰明、努力、達見・・・ 宮本百合子 「坪内先生について」
・・・などを、私は深い興味をもって示唆されるところ多く読んだ。正宗白鳥氏が嘗て「大地」の評を書いておられたが、その文章ではバックの淡々たる筆致が中国の庶民の生活をよく描き出しており、それは、バックがヨーロッパ人の優越感によって、中国の民衆の現実を・・・ 宮本百合子 「パァル・バックの作風その他」
・・・この小説は作者オストロフスキーがロシアの国内戦当時自身経験し又見聞した歴史を描いたものであり、多分正宗白鳥氏であったかは、この作品の題材と筆致とを批評して、期待した程の感動を受けなかったと言っておられたと思う。しかしながらこの小説を読む機会・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・などをのせ、ひきつづいて正宗白鳥、宇野浩二、志賀直哉などの作品をあらそって載せた現象は、日本の悲劇の一面をあらわした。商業雑誌は、戦争協力をした作家をさける必要を感じた。編輯企画の行われた前年の八九月は、まだ治安維持法が撤廃されていなかった・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・、女の作家の気持からいうとネ、まだまだ充分満足するように書かれているとはいえないで、やっぱりまだ自分たちが書かねばならぬ残されているものがあると常に考えるのはおそらく私一人ではないだろうと思いますネ。正宗白鳥さんが、女は女を十分描いていない・・・ 宮本百合子 「不満と希望」
・・・ 小説は、よんでいる間だけすらすらと面白ければそれでいいのだ、深刻に考えるようなあと味がのこったりしてはいけない、というあるジャーナリストの意見に正宗白鳥が賛成している。これはリーダーズ・ダイジェストの編輯方針と全く同じである。自然主義・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・田山君とか、島崎君とか、正宗君とか、それから少し後に仲間入をしたような小山内君とか、永井君とか云うような諸君でしょう。それと少し距離のある方面で働いているのは夏目君に接近している二三の人位なものでしょうか。小説以外の作品を出していられる諸君・・・ 森鴎外 「Resignation の説」