出典:青空文庫
・・・それは作り作られる歴史的自己の立場、生死的自己の立場においてでなければならない。道元は自己をならうことは自己をわするるなり、自己をわするるというは、万法に証せらるるなりという。我々は抽象的意識的自己を否定した所、身心一如なる所に、真の自己を・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・ 今月の『新小説』の和辻哲郎氏が「入宋求法の沙門道元」に就いて書いて居られるが、あの中の「即ち十丈の竿のさきにのぼって手足を放って身心を放下する如き覚悟がなくては」という気持、あの「人を救うための求道ではない、真理の為めに真理を究める求・・・ 宮本百合子 「女流作家として私は何を求むるか」
・・・「鳥飛んで鳥に似たり、という詩が道元にあるが、君の話も道元に似てますね。」 梶は安心した気持でそんな冗談を云ったりした。西日の射しこみ始めた窓の外で、一枚の木製の簾が垂れていた。栖方はそれを見ながら、「先日お宅から帰ってから、ど・・・ 横光利一 「微笑」