出典:青空文庫
一 影なき男 一種の探偵映画である。しかしこの映画のおもしろみはストーリーの猟奇的な探偵趣味よりもむしろウィリアム・パウェルという男とマーナ・ロイという女とこの二人の俳優の特異なパーソナリティの組み合わせと、その二人で代表された・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(※[#ローマ数字7、1-13-27])」
・・・しかしこの一例から考えても、同じような経験は存外多くの人に共通なものかもしれない。ウィリアム・ジェームスの心理学の中に「音楽の享楽にふける事でさえも、その人が自分で演奏者であるか、あるいはその音楽を純理知的に受け入れるほどに音楽的の天賦を有・・・ 寺田寅彦 「丸善と三越」
・・・しかし読物には事を欠かなくてマクスウェルの電磁気論や、マクスウェル及びヘルムホルツの色の研究、それからストークスやウィリアム・タムソンの主要な論文を読み、傍らまたミルの論理学や経済論を読んでいた。 一八六六年二十四歳で Trinity ・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
・・・ここで John William Strutt が生れた。これがすなわち物理学者のレーリー卿である。 レーリーの血筋に科学的な遺伝があるとすればそれはこの外戚のヴィカース家から来ているらしい。すなわち外戚祖父とその兄弟は工兵士官であり、・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
・・・ 以上はほとんどすべて Robert John Strutt すなわち現在のレーリー卿の著書 "John william Strutt, Third Baron Rayleigh" から抄録したものである。ここでは彼の科学的な仕・・・ 寺田寅彦 「レーリー卿(Lord Rayleigh)」
・・・健全なるジョン・ラスキンが理想の流れを汲んだ近世装飾美術の改革者ウィリアム・モオリスという英吉利人の事を言おう。モオリスは現代の装飾及工芸美術の堕落に対して常に、趣味 Got と贅沢 Luxe とを混同し、また美 Beaut と富貴 Ric・・・ 永井荷風 「妾宅」
・・・いずれの時、何者が錬えた盾かは盾の主人なるウィリアムさえ知らぬ。ウィリアムはこの盾を自己の室の壁に懸けて朝夕眺めている。人が聞くと不可思議な盾だと云う。霊の盾だと云う。この盾を持って戦に臨むとき、過去、現在、未来に渉って吾願を叶える事のある・・・ 夏目漱石 「幻影の盾」
・・・ スコットランドのバラッドに Sweet William's Ghost というのがある。この歌は、或女の処へ、其女の亭主の幽霊が出て来て、自分は遠方で死だという事を知らすので、其二人の問答の内に、次のような事がある。“Is t・・・ 正岡子規 「死後」
・・・祭司次長、ウィリアム・タッピングという人で、爪哇の宣教師なそうですが、せいの高い立派なじいさんでした、が見兼ねて出て行って、祭司長にならんで立ちました。式場はしいんと静まりました。「諸君、祭司長は、只今既に、無言を以て百千万言を披瀝した・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・イギリスの十九世紀初頭の詩人画家であったウィリアム・ブレークが、独特な水色や紅の彩色で森厳に描いた人格化された天の神秘的な版画も、宇宙に向ってのロマンティックな一種の絵として面白いものだったと思う。 岩波新書で出ている中谷宇吉郎氏の「雪・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」