出典:青空文庫
・・・ 時どき烟を吐く煙突があって、田野はその辺りから展けていた。レンブラントの素描めいた風景が散らばっている。 黝い木立。百姓家。街道。そして青田のなかに褪赭の煉瓦の煙突。 小さい軽便が海の方からやって来る。 海からあがって来た・・・ 梶井基次郎 「城のある町にて」
・・・ボスニア産のプリュウンであろうが、機関車であろうが、レンブラントの名画であろうが、それを大金で買って、気に入らないから、直ぐに廉価に売るには、何の差支もない。これは立派な売買である。仲買にたっぷり握らせて、自分も現金を融通する。仲買は公民権・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・たとえばだいじのむすこを毒殺された親父の憂鬱を表現する室内のシーンでもその画面の明暗の構図の美しさはさまにレンブラントを想起させるものがあるが、この場面のいろいろなヴァリエーションが少なくも多くの日本人には少し長すぎるであろうと思われる。し・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ 一つ確かに覚えているのは、レンブラント画集の立派なのが他の二、三の画集と並んで本箱に立ててあった事で、これだけが荒涼な室の中に著しい異彩を放っていた。それからもう一つ、描きかけの自画像で八号か十号くらいだったかと思う。一体に青味の勝っ・・・ 寺田寅彦 「中村彝氏の追憶」
・・・などでもルネ・クレイルは、人間が特別なセットの中でだけ恋愛をするものではないという健全な理解の上に立って、都会生活の描写の中にそれをいかした。レンブラントの生涯を映画化した「描かれた人生」では、一人の芸術家が二様の動機で二人のそれぞれ性格の・・・ 宮本百合子 「映画の恋愛」
・・・同時にその市場を運営していたアムステルダムの市民は、ルーベンス、レンブラントの芸術を生む母胎ともなった。ハンザ同盟に加っていたヨーロッパのいくつかの自由都市は、それぞれのわが市から出発して商業の上で世界を一まわりしていたばかりでなく、当時の・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・ 私のかいた第一信は何日かかってお手に入りましたか。キカイ体操はそちらにありますか? レンブラントのエッチングの絵はがきは届きましたか。ロンドンで買ったのが出たのでお目にかけたのでした。亀やの包みは先方であなたからの手紙を見せてくれなければ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・p.226 ツワイクはDとレンブラントとを同類としている。しかしこれは当っているだろうか、明と暗との対比が似ているからと云って? レンブラントの暖かさはDの何処に? これはDの対立の分析の正確さをこわすほど安易な対比である。・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」