ちゅう‐もん【注文/×註文】例文一覧 30件

  1. ・・・ 客は註文を通した後、横柄に煙草をふかし始めた。その姿は見れば見るほど、敵役の寸法に嵌っていた。脂ぎった赭ら顔は勿論、大島の羽織、認めになる指環、――ことごとく型を出でなかった。保吉はいよいよ中てられたから、この客の存在を忘れたさに、隣・・・<芥川竜之介「魚河岸」青空文庫>
  2. ・・・自由と活動と、この二つさえあれば、べつに刺身や焼肴を注文しなくとも飯は食えるのだ。 予はあくまでも風のごとき漂泊者である。天下の流浪人である。小樽人とともに朝から晩まで突貫し、小樽人とともに根限りの活動をすることは、足の弱い予にとうてい・・・<石川啄木「初めて見たる小樽」青空文庫>
  3. ・・・元来この小説は京都の日の出新聞から巌谷小波さんの処へ小説を書いてくれという註文が来てて、小波さんが書く間の繋として僕が書き送ったものである。例の五枚寸延びという大安売、四十回ばかり休みなしに書いたのである。 本人始めての活版だし、出世第・・・<泉鏡花「おばけずきのいわれ少々と処女作」青空文庫>
  4. ・・・ 吉弥はすぐ乗り気になって、いよいよそうと定まれば、知り合いの待合や芸者屋に披露して引き幕を贈ってもらわなければならないとか、披露にまわる衣服にこれこれかかるとか、かの女も寝ころびながら、いろいろの注文をならべていたが、僕は、その時になれ・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  5. ・・・五 神楽坂路考 これほどの才人であったが、笑名は商売に忙がしかった乎、但しは註文が難かしかった乎して、縁が遠くてイツまでも独身で暮していた。 その頃牛込の神楽坂に榎本という町医があった。毎日門前に商人が店を出したというほ・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  6.  子供は、自分のお母さんを絶対のものとして、信じています。そのお母さんに対して、註文を持つというようなことがあれば、それは、余程大きくなってからのことでありましょう。たとえば、お母さんに頼んだことを、きちんとしてもらいたいとか、また、他・・・<小川未明「お母さんは僕達の太陽」青空文庫>
  7. ・・・ で、店は繁昌するし、後立てはシッカリしているし、おまけに上さんは美しいし、このまま行けば天下泰平吉新万歳であるが、さてどうも娑婆のことはそう一から十まで註文通りには填まらぬもので、この二三箇月前から主はブラブラ病いついて、最初は医者も・・・<小栗風葉「深川女房」青空文庫>
  8. ・・・孫はあなた方の御注文遊ばした梨の実の為に命を終えたのでございます。どうぞ葬いの費用を多少なりともお恵み下さいまし。」 これを聞くと、見物の女達は一度にわっと泣き出しました。 爺さんは両手を前へ出して、見物の一人一人からお金を貰って歩・・・<小山内薫「梨の実」青空文庫>
  9. ・・・なお校長の驥尾に附して、日本橋五丁目の裏長屋に住む浄瑠璃本写本師、毛利金助に稽古本を註文したりなどした。 お君は金助のひとり娘だった。金助は朝起きぬけから夜おそくまで背中をまるめてこつこつと浄瑠璃の文句を写しているだけが能の、古ぼけ・・・<織田作之助「雨」青空文庫>
  10. ・・・しかしそういう御事情で出京なさったということでもあり、それにS君の御手紙にも露骨に言えという注文ですから申しあげますが、まあほとんどと言いたいですね。とてもあなたの御希望のようなわけには行かんと思いますがね。露骨なところを申しあげれば、私に・・・<葛西善蔵「贋物」青空文庫>
  11. ・・・午後四時の間食には果物、時には駿河屋の夜の梅だとか、風月堂の栗饅頭だとかの注文をします。夕食は朝が遅いから自然とおくれて午後十一時頃になる。此時はオートミルやうどんのスープ煮に黄卵を混ぜたりします。うどんは一寸位に切って居りました。 食・・・<梶井久「臨終まで」青空文庫>
  12. ・・・勝子のやつめ、かってに注文して強くしてもらっているのじゃないかな」そんなことがふっと思えた。いつか峻が抱きすくめてやった時、「もっとぎうっと」と何度も抱きすくめさせた。その時のことが思い出せたのだった。そう思えばそれもいかにも勝子のしそうな・・・<梶井基次郎「城のある町にて」青空文庫>
  13. ・・・ 全然注文したよう。これを数える手はふるえ、数え終って自分は洋燈の火を熟と見つめた。直ぐこれを明日銀行に預けて帳簿の表を飾ろうと決定たのである。 又盗すまれてはと、箪笥に納うて錠を卸ろすや、今度は提革包の始末。これは妻の寝静まった後なら・・・<国木田独歩「酒中日記」青空文庫>
  14. ・・・ 娘に対して注文がないということは生への冷淡と、遅鈍のしるしでほめた話ではない。むしろさかんな注文を出して、立派な、特色のある娘たちを産み出してもらいたいものだ。 イギリスの貴族の青年は祖国の難のあるとき、ぐずぐずしていると、令嬢た・・・<倉田百三「学生と生活」青空文庫>
  15. ・・・なるべく末子の学校へ遠くないところに、そんな注文があった上に、よさそうな貸し家も容易に見当たらなかったのである。あれからまた一軒あるにはあって、借り手のつかないうちにと大急ぎで見に行って来た家は、すでに約束ができていた。今の住居の南隣に三年・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  16. ・・・今度のは大きさも鼬ぐらいしかないし、顔も少し趣を変えるように注文したのであろうけれど、「なんぼどのような狐を拵えてきたところで、お孝ちゃんの顔が元のままじゃどうしてもだめでがんすわいの。へへへへへ」と、初やは、やっと廻りくどい話を切って・・・<鈴木三重吉「千鳥」青空文庫>
  17.  本職の詩人ともなれば、いつどんな注文があるか、わからないから、常に詩材の準備をして置くのである。「秋について」という注文が来れば、よし来た、と「ア」の部の引き出しを開いて、愛、青、赤、アキ、いろいろのノオトがあって、そ・・・<太宰治「ア、秋」青空文庫>
  18. ・・・宅へ帰ると世界中の学者や素人から色々の質問や註文の手紙が来ている。それに対して一々何とか返事を出さなければならないのである。外国から講演をしに来てくれと頼まれる。このような要求は研究に熱心な学者としての彼には迷惑なものに相違ないが、彼は格別・・・<寺田寅彦「アインシュタイン」青空文庫>
  19. ・・・ お絹は電話で、昨夜道太が行った料亭へ朝飯を註文した。「御飯も持ってきてね、一人前」 それからまた台所の方にいたかと思うと、道太が間もなく何か取りかたがた襦袢を著に二階へあがったころには、お絹は床をあげて、彼の脱ぎ棄ての始末をし・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  20. ・・・明治時代の吉原とその附近の町との情景は、一葉女史の『たけくらべ』、広津柳浪の『今戸心中』、泉鏡花の『註文帳』の如き小説に、滅び行く最後の面影を残した。 わたくしが弱冠の頃、初めて吉原の遊里を見に行ったのは明治三十年の春であった。『たけく・・・<永井荷風「里の今昔」青空文庫>
  21. ・・・それは犬殺しが何処かで赤犬の肉を註文されて狙いをつけたのだから屹度殺してやるとそこらで放言して行ったということを知らせる為めであった。文造は心底から大事と思って知らせたのであったが然し此は知らなかった方が却て太十にも犬にも幸であったのである・・・<長塚節「太十と其犬」青空文庫>
  22. ・・・その結果として冒頭だか序論だかに私の演説の短評を試みられたのはもともと私の注文から出た事ではなはだありがたいには違ないけれども、その代り厭にやり悪くなってしまった事もまた争われない事実です。元来がそう云う情ない依頼をあえてするくらいですから・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  23. ・・・ けれどもこの注文は、実際に於て満足されない事情がある。なぜかならば我等の芸術を装幀するものは、通例我等自身ではないからです。我等の為し得るところは、精々のところ他人の製作した者の中から、あの額縁この表紙を選定し指定するに過ぎない。しか・・・<萩原朔太郎「装幀の意義」青空文庫>
  24. ・・・実際に出来ぬことを勧め、行われぬことを強うるは、元々無理なる注文にして、其の無理は遂に人をして偽を行わしむるに至る可し。女子結婚の後は実の父母よりも舅姑の方を親愛す可しと言うと雖も、舅姑とは夫の父母にこそあれ我父母に非ず、父母に非ざる者を父・・・<福沢諭吉「女大学評論」青空文庫>
  25. ・・・の時には生人形を拵えるというのが自分で付けた註文で、もともと人間を活かそうというのだから、自然、性格に重きを置いたんだが、今度の「平凡」と来ちゃ、人間そのものの性格なんざ眼中に無いんさ。丸ッきり無い訳ではないが、性格はまア第二義に落ちて、そ・・・<二葉亭四迷「私は懐疑派だ」青空文庫>
  26. ・・・学校から纏めて注文するというので僕は苹果を二本と葡萄を一本頼んでおいた。四月九日〔以下空白〕一千九百廿五年五月五日 晴まだ朝の風は冷たいけれども学校へ上り口の公園の桜は咲いた。けれどもぼくは桜の花はあんまり好・・・<宮沢賢治「或る農学生の日誌」青空文庫>
  27. ・・・、後に工場みたいなものがあって、騒々しいので、もう少し静かなところにしたいと思って先日も探しに行ったのですが、私はどちらかというと椅子の生活が好きな方で、恰度近いところに洋館の空いているのを見つけ私の注文にはかなった訳ですが、私と一緒にいる・・・<宮本百合子「愛と平和を理想とする人間生活」青空文庫>
  28. ・・・その時の話に、敢て注文するではないが、今の文壇の評を書いてくれたなら、最も嬉しかろうと云うことであった。何か書けが既に重荷であるに、文壇の事を書けはいよいよむずかしい。新聞に従事して居る程の人は固より知って居られるであろうが、今の分業の世の・・・<森鴎外「鴎外漁史とは誰ぞ」青空文庫>
  29. ・・・ 知人の高田が梶の所へ来て、よく云われるそんな注文を梶に出した。別に稀な出来事ではなかったが、このときに限って、いつもと違う特別な興味を覚えて梶は筆を執った。それというのも、まだ知らぬその青年について、高田の説明が意外な興味を呼び起させ・・・<横光利一「微笑」青空文庫>
  30. ・・・いかにすれば珍しい変種ができるだろうかとか、いかにすれば予定の時日の間に注文通りの果実を結ぶだろうかとか、すべてがあまりに人工的である。 天を突こうとするような大きな願望は、いじけた根からは生まれるはずがない。 偉大なものに対する崇・・・<和辻哲郎「樹の根」青空文庫>