ない‐し【×乃至】例文一覧 30件

  1. ・・・語学的天才たる粟野さんはゴッホの向日葵にも、ウォルフのリイドにも、乃至はヴェルアアランの都会の詩にも頗る冷淡に出来上っている。こう云う粟野さんに芸術のないのは犬に草のないのも同然であろう。しかし保吉に芸術のないのは驢馬に草のないのも同然であ・・・<芥川竜之介「十円札」青空文庫>
  2. ・・・更に甚しい場合を挙げれば、以前或名士に愛されたと云う事実乃至風評さえ、長所の一つに数えられるのである。しかもあのクレオパトラは豪奢と神秘とに充ち満ちたエジプトの最後の女王ではないか? 香の煙の立ち昇る中に、冠の珠玉でも光らせながら、蓮の花か・・・<芥川竜之介「侏儒の言葉」青空文庫>
  3. ・・・彼は、愛も憎みも、乃至また性欲も忘れて、この象牙の山のような、巨大な乳房を見守った。そうして、驚嘆の余り、寝床の汗臭い匂も忘れたのか、いつまでも凝固まったように動かなかった。――楊は、虱になって始めて、細君の肉体の美しさを、如実に観ずる事が・・・<芥川竜之介「女体」青空文庫>
  4. ・・・人は誰でも、その時が過ぎてしまえば間もなく忘れるような、乃至は長く忘れずにいるにしても、それを言い出すには余り接穂がなくてとうとう一生言い出さずにしまうというような、内から外からの数限りなき感じを、後から後からと常に経験している。多くの人は・・・<石川啄木「一利己主義者と友人との対話」青空文庫>
  5. ・・・という事であるのを忘れて了って、既に従来の道徳は必然服従せねばならぬものでない以上、凡ての夫が妻ならぬ女に通じ、凡ての妻が夫ならぬ男に通じても可いものとし、乃至は、そうしない夫と妻とを自覚のない状態にあるものとして愍れむに至っては、性急もま・・・<石川啄木「性急な思想」青空文庫>
  6. ・・・僕は人の手に作られた石の地蔵に、かしこくも自在の力ましますし、観世音に無量無辺の福徳ましまして、その功力測るべからずと信ずるのである。乃至一草一木の裡、あるいは鬼神力宿り、あるいは観音力宿る。必ずしも白蓮に観音立ち給い、必ずしも紫陽花に鬼神・・・<泉鏡花「おばけずきのいわれ少々と処女作」青空文庫>
  7. ・・・という芭蕉の句も、この辺という名代の荒海、ここを三十噸、乃至五十噸の越後丸、観音丸などと云うのが、入れ違いまする煙の色も荒海を乗越すためか一際濃く、且つ勇ましい。 茶店の裏手は遠近の山また山の山続きで、その日の静かなる海面よりも、一層か・・・<泉鏡花「湯女の魂」青空文庫>
  8. ・・・外国人が褒めなかったなら、あるいは褒めても高い価を払わなかったなら、古い錦絵は既くの昔し張抜物や、屏風や襖の下張乃至は乾物の袋にでもなって、今頃は一枚残らず失くなってしまったろう。少くも貧乏な好事家に珍重されるだけで、精々が黄表紙並に扱われ・・・<内田魯庵「淡島椿岳」青空文庫>
  9. ・・・ それ故に、課外の情操教育や、乃至人格を造る上に役立つ教化は学校教育と併行して奨励されなければならぬ急務に迫られています。児童を中心とする文学は、それ自からの中に児童の世界を展開し、生活し、観察し、思考することより描かれたものでなければ・・・<小川未明「新童話論」青空文庫>
  10. ・・・文芸ばかりでなく、絵画に於てもそうであるが、たゞその形とか色とか、乃至は題材とか技巧とか、そういった外面的のものにはそれ自身に本当の感激を与える力はないものだ。我々が本当の感激をうけるのは、それらのものゝ背後に潜んでいる、作者自身の精神によ・・・<小川未明「囚われたる現文壇」青空文庫>
  11. ・・・ 今から、ちょうど九年乃至十年前の日本の社会は、斯の如き、現象が著るしかった。夫を捨て、子供を捨て、自分の好める男と奔った。即ち家出をした女を、殊に、知識階級の家庭に沢山見たのである。 このことは、女の自覚とも見らるれば、また、一面・・・<小川未明「婦人の過去と将来の予期」青空文庫>
  12. ・・・新派の芝居や喜劇や放送劇や浪花節や講談や落語や通俗小説には、一種きまりきった百姓言葉乃至田舎言葉、たとえば「そうだんべ」とか「おら知ンねえだよ」などという紋切型が、あるいは喋られあるいは書かれて、われわれをうんざりさせ、辟易させ、苦笑させる・・・<織田作之助「大阪の可能性」青空文庫>
  13. ・・・ という言葉の終らぬ内に、例の「痰壺の掃除」乃至「祭りの太鼓打ち」がはじまり、下手すると半殺しの目に会わされるだろうということと、全く同じことを意味するのである。二タス二ガ四ニ相等シイのと同じように「隊長ハ鶏ノスキ焼キガ食ベタイ」「二人・・・<織田作之助「昨日・今日・明日」青空文庫>
  14.  小は大道易者から大はイエスキリストに到るまで予言者の数はまことに多いが、稀代の予言狂乃至予言魔といえば、そうざらにいるわけではない。まず日本でいえば大本教の出口王仁三郎などは、少数の予言狂、予言魔のうちの一人であろう。 まこと・・・<織田作之助「終戦前後」青空文庫>
  15. ・・・「インタナショナルとは、国際的乃至世界的団結、全世界的同盟という意味である。」ブハーリン監輯の「インタナショナル発展史」にはそう説明してある。 資本主義がすさまじい勢力を以て発展して、国際的威力として、プロレタリア階級に迫ってきた時、労・・・<黒島伝治「反戦文学論」青空文庫>
  16. ・・・そして、諸々の作品に見られる愛国的乃至は軍国的意識性は、日清戦争の××××××××して解放戦争、防禦戦争としようとした従来の俗説に対して、一つの反証を、ブルジョアジー自身によって動員された文学そのものが皮肉にも提供している。 日清戦争後・・・<黒島伝治「明治の戦争文学」青空文庫>
  17. ・・・無趣味は、時間的乃至は性格的な原因からでなくて、或いはかれの経済状態から拠って来たものかも知れない。 その日、男爵は二時間ちかく電車にゆられて、撮影所のまちに到着した。草深い田舎であったが、けれどもかれは油断をしなかった。金雀枝の茂みの・・・<太宰治「花燭」青空文庫>
  18. ・・・若き兵士たり、それから数行の文章の奥底に潜んで在る不安、乃至は、極度なる羞恥感、自意識の過重、或る一階級への義心の片鱗、これらは、すべて、銭湯のペンキ絵くらいに、徹頭徹尾、月並のものである。私は、これより数段、巧みに言い表わされたる、これら・・・<太宰治「狂言の神」青空文庫>
  19. ・・・の眸を焼くに至った変化につれて、木村項の周囲にある暗黒面は依然として、木村項の知られざる前と同じように人からその存在を忘れられるならば、日本の科学は木村博士一人の科学で、他の物理学者、数学者、化学者、乃至動植物学者に至っては、単位をすら充た・・・<夏目漱石「学者と名誉」青空文庫>
  20. ・・・こんな中腰の態度で、芝居を見物する原因は複雑のようですが、その五割乃至七割は舞台で演ずる劇そのものに帰着するのかも知れません。あの劇がね、私の巣の中の世界とはまるで別物で、しかもあまり上等でないからだろうと思うんです。こう云うと、役者や見物・・・<夏目漱石「虚子君へ」青空文庫>
  21. ・・・これは極めて短時間の意識を学者が解剖して吾々に示したものでありますが、この解剖は個人の一分間の意識のみならず、一般社会の集合意識にも、それからまた一日一月もしくは一年乃至十年の間の意識にも応用の利く解剖で、その特色は多人数になったって、長時・・・<夏目漱石「現代日本の開化」青空文庫>
  22. ・・・別に一区の講堂ありて、読書・数学の場所となし、手習の暇に順番を定め、十人乃至十五人ずつ、この講堂に出でて教を受く。 一所の小学校に、筆道師・句読師・算術師、各一人、助教の数は生徒の多寡にしたがって一様ならず、あるいは一人あり、あるいは三・・・<福沢諭吉「京都学校の記」青空文庫>
  23. ・・・で、社会主義ということは、実社会に対する態度をいうのだが、同時にまた、一方において、人生に対する態度、乃至は人間の運命とか何とか彼とかいう哲学的趣味も起って来た。が、最初の頃は純粋に哲学的では無かった……寧ろ文明批評とでもいうようなもので、・・・<二葉亭四迷「予が半生の懺悔」青空文庫>
  24. ・・・けれどお七の心の中には賢もなく愚もなく善もなく悪もなく人間もなく世間もなく天地万象もなく、乃至思慮も分別もなくなって居る。ある者はただ一人の、神のような恋人とそれに附随して居る火のような恋とばかりなのである。もし世の中に或る者が存して居ると・・・<正岡子規「恋」青空文庫>
  25. 普通中学校などに備え付けてある顕微鏡は、拡大度が六百倍乃至八百倍ぐらいまでですから、蝶の翅の鱗片や馬鈴薯の澱粉粒などは実にはっきり見えますが、割合に小さな細菌などはよくわかりません。千倍ぐらいになりますと、下のレンズの直径が・・・<宮沢賢治「手紙 三」青空文庫>
  26. ・・・斯の如くにして百生、二百生、乃至劫をも亘るまで、この梟身を免れぬのじゃ。審に諸の患難を蒙りて又尽くることなし。もう何もかも辛いことばかりじゃ。さて今東の空は黄金色になられた。もう月天子がお出ましなのじゃ。来月二十六夜ならば、このお光に疾翔大・・・<宮沢賢治「二十六夜」青空文庫>
  27. ・・・ そして、一緒に建つ姙婦健康相談所で、プロレタリア婦人の避姙の相談にものり、産院で子を生ませてもらっても、とうてい育てられないほど困った時には、附属の乳児院の方で六ヵ月乃至一年間預り、または院外保育児として、里子に出し、その費用も同院で・・・<宮本百合子「「市の無料産院」と「身の上相談」」青空文庫>
  28. ・・・ 避暑の方法はやはり日本と同じで海か山へ行くのですが、しかし海へ行くとしても只ゆくばかりでなく、いろいろな戸外ゲームたとえば射的や乗馬などを全く何もかも忘れて愉快に無邪気に数日乃至数週間を過ごします、それに近頃では天幕生活が非常によろこ・・・<宮本百合子「女学生だけの天幕生活」青空文庫>
  29. ・・・彼は、「生の流転をはかなむ心持ちに纏絡する煩わしい感情から脱したい、乃至時々それから避けて休みたい、ある土台を得たい」という心を起こすのである。そうしてそれが、たとい時に彼を宗教へ向かわせるにしても、結局宗教芸術に現われた、「永久味」の味到・・・<和辻哲郎「享楽人」青空文庫>
  30. ・・・神農もソクラテスもカントもランスロットもエレーンも乃至はお染久松もこの問題に触れた。釈尊やイエスはこれを解いて、多くの精霊を救う。この救われたる衆生が真の人生を現わしたか。救われずして地獄の九圏の中に阿鼻叫喚しているはずの、たとえば歴山大王・・・<和辻哲郎「霊的本能主義」青空文庫>