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こう‐りょう〔クワウリヤウ〕【荒涼】例文一覧 30件

  1. ・・・庭の向うに続いた景色も、曇天を映した川の水と一しょに、荒涼を極めたものだった。が、その景色が眼にはいると、お蓮は嗽いを使いがら、今までは全然忘れていた昨夜の夢を思い出した。 それは彼女がたった一人、暗い藪だか林だかの中を歩き廻っている夢・・・<芥川竜之介「奇怪な再会」青空文庫>
  2. ・・・ 私は荒涼とした思いをいだきながら、この水のじくじくした沼の岸にたたずんでひとりでツルゲーネフの森の旅を考えた。そうして枯草の間に竜胆の青い花が夢見顔に咲いているのを見た時に、しみじみあの I have nothing to do wi・・・<芥川竜之介「日光小品」青空文庫>
  3. ・・・その緑が縦にMの字の形をしてとぎれとぎれに山膚を縫ったのが、なんとなく荒涼とした思いを起させる。こんな山が屏風をめぐらしたようにつづいた上には浅黄繻子のように光った青空がある。青空には熱と光との暗影をもった、溶けそうな白い雲が銅をみがいたよ・・・<芥川竜之介「槍が岳に登った記」青空文庫>
  4. ・・・ 大濤のようなうねりを見せた収穫後の畑地は、広く遠く荒涼として拡がっていた。眼を遮るものは葉を落した防風林の細長い木立ちだけだった。ぎらぎらと瞬く無数の星は空の地を殊更ら寒く暗いものにしていた。仁右衛門を案内した男は笠井という小作人で、・・・<有島武郎「カインの末裔」青空文庫>
  5. ・・・ 何処となく荒涼とした粗野な自由な感じ、それは生面の人を威脅するものではあるかも知れないけれども、住み慣れたものには捨て難い蠱惑だ。あすこに住まっていると自分というものがはっきりして来るかに思われる。艱難に対しての或る勇気が生れ出て来る・・・<有島武郎「北海道に就いての印象」青空文庫>
  6. ・・・ 杖は※状算を乱して、満目転た荒涼たり。 いつも変らぬことながら、お通は追懐の涙を灌ぎ、花を手向けて香を燻じ、いますが如く斉眉きて一時余も物語りて、帰宅の道は暗うなりぬ。 急足に黒壁さして立戻る、十間ばかり間を置きて、背後よりぬ・・・<泉鏡花「妖僧記」青空文庫>
  7. ・・・一つ精密に言うと――何故不安が不安になって来るかというと、これからだんだん人が寝てしまって医者へ行ってもらうということもほんとうにできなくなるということや、そして母親も寝てしまってあとはただ自分一人が荒涼とした夜の時間のなかへ取り残されると・・・<梶井基次郎「のんきな患者」青空文庫>
  8. ・・・     九 滅度 身延山の寒気は、佐渡の荒涼の生活で損われていた彼の健康をさらに傷つけた。特に執拗な下痢に悩まされた。「此の法門申し候事すでに二十九年なり。日々の論議、月々の難、両度の流罪に身疲れ、心いたみ候ひし故にや・・・<倉田百三「学生と先哲」青空文庫>
  9. ・・・ひとつの、ささやかな興奮のあとに来る、倦怠、荒涼、やりきれない思いである。兄妹五人、一ことでも、ものを言い出せば、すぐに殴り合いでもはじまりそうな、険悪な気まずさに、閉口し切った。 母は、ひとり離れて坐って、兄妹五人の、それぞれの性格の・・・<太宰治「愛と美について」青空文庫>
  10. ・・・今見る三島は荒涼として、全く他人の町でした。此処にはもう、佐吉さんも居ない。妹さんも居ない。江島さんも居ないだろう。佐吉さんの店に毎日集って居た若者達も、今は分別くさい顔になり、女房を怒鳴ったりなどして居るのだろう。どこを歩いても昔の香が無・・・<太宰治「老ハイデルベルヒ」青空文庫>
  11. ・・・ごっとん、ごっとん、のろすぎる電車にゆられながら、暗鬱でもない、荒涼でもない、孤独の極でもない、智慧の果でもない、狂乱でもない、阿呆感でもない、号泣でもない、悶悶でもない、厳粛でもない、恐怖でもない、刑罰でもない、憤怒でもない、諦観でもない・・・<太宰治「狂言の神」青空文庫>
  12. ・・・ ああ、荒涼。四畳半。その畳の表は真黒く光り、波の如く高低があり、縁なんてその痕跡をさえとどめていない。部屋一ぱいに、れいのかつぎの商売道具らしい石油かんやら、りんご箱やら、一升ビンやら、何だか風呂敷に包んだものやら、鳥かごのようなもの・・・<太宰治「グッド・バイ」青空文庫>
  13. ・・・ 私はこの荒涼の風景を眺めて、暫くぼんやりしていた。霧はいよいようすらいで、日の光がまんなかの峯にさし始めた。霧にぬれた峯は、かがやいた。朝日だ。それが朝日であるか、夕日であるか、私にはその香気でもって識別することができるのだ。それでは・・・<太宰治「猿ヶ島」青空文庫>
  14. ・・・は、その内容の物語とおなじく悲劇的な結末を告げたけれど、彼の心のなかに巣くっている野性の鶴は、それでも、なまなまと翼をのばし、芸術の不可解を嘆じたり、生活の倦怠を託ったり、その荒涼の現実のなかで思うさま懊悩呻吟することを覚えたわけである。・・・<太宰治「猿面冠者」青空文庫>
  15. ・・・聯想は聯想を生んで、その身のいたずらに青年時代を浪費してしまったことや、恋人で娶った細君の老いてしまったことや、子供の多いことや、自分の生活の荒涼としていることや、時勢におくれて将来に発達の見込みのないことや、いろいろなことが乱れた糸のよう・・・<田山花袋「少女病」青空文庫>
  16. ・・・ 進むに従って両岸の景色が何となく荒涼に峻険になって来るのが感ぜられた。崖の崩れた生ま生ましい痕が現わになり渓流の中にも危岩が聳え立って奔流を苛立たせている処もある。 大きな崖崩れで道路のこわれたあとがもう荒まし修繕が出来ていた。そ・・・<寺田寅彦「雨の上高地」青空文庫>
  17. ・・・グリーンランドのどの辺を舞台にしたものか不明なのが遺憾ではあるが、とにかく先ず極地の夏のフィヨルドの景色の荒涼な美しさだけでも、普通の動かない写真では到底見られぬ真実味をもって観客に迫ってくるようである。それからまた、この映画の中に描写され・・・<寺田寅彦「映画雑感6[#「6」はローマ数字、1-13-26]」青空文庫>
  18. ・・・それからの後の場面で荒涼たる大雪原を渡ってくるトナカイの大群の実写は、あれは実に驚くべき傑作である。理屈なし説明なしに端的にすべての人の心を奪う種類のフィルムであり、活動映画というものの独自な領域を鮮明に主張したものである。絵ではもちろんの・・・<寺田寅彦「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  19. ・・・昭和六年の元旦のちょうど昼ごろに、麻布の親類から浅草の親類へ回る道順で銀座を通って見たときの事である。荒涼、陰惨、ディスマル、トロストロース、あらゆる有り合わせの形容詞の総ざらえをしても間に合わない光景である。いつもは美しく飾り立てた小売り・・・<寺田寅彦「銀座アルプス」青空文庫>
  20. ・・・その絵の景色には、普通日本人の頭にある京都というものは少しも出ていなくて、例えばチベットかトルキスタンあたりのどこかにありそうな、荒涼な、陰惨な、そして乾き切った土地の高みの一角に、「屋根のある棺柩」とでも云いたいような建物がぽつぽつ並んで・・・<寺田寅彦「雑記(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」青空文庫>
  21. ・・・ 誰かも云ったように、砂漠と苦海の外には何もない荒涼落莫たるユダヤの地から必然的に一神教が生れた。しかし山川の美に富む西欧諸国に入り込んだ基督教は、表面は一神でありながら内実はいつの間にか多神教に変化した。同時にユダヤ人の後裔にとっての・・・<寺田寅彦「札幌まで」青空文庫>
  22. ・・・其葦の枯葉が池の中心に向つて次第に疎になつて、只枯蓮の襤褸のやうな葉、海綿のやうな房が碁布せられ、葉や房の茎は、種々の高さに折れて、それが鋭角に聳えて、景物に荒涼な趣を添へてゐる。此の bitume 色の茎の間を縫つて、黒ずんだ上に鈍い反射・・・<永井荷風「上野」青空文庫>
  23. ・・・そして聊たりとも荒涼寂寞の思を味い得たならば望外の幸であろうとなした。 予め期するところは既に斯くの如くであった。これに対して失意の憾みの生ずべき筈はない。コールタを流したような真黒な溝の水に沿い、外囲いの間の小径に進入ると、さすがに若・・・<永井荷風「百花園」青空文庫>
  24. ・・・ 私は妙な性質で、寄席興行その他娯楽を目的とする場所へ行って坐っていると、その間に一種荒涼な感じが起るんです。左右前後の綺羅が頭の中へ反映して、心理学にいわゆる反照聯想を起すためかとも思いますが、全くそうでもないらしいです。あんな場所で・・・<夏目漱石「虚子君へ」青空文庫>
  25. ・・・ 一望果しなく荒涼とした草原を自動車は疾駆し次第に山腹よりに近づき、ドーモンその他の砲台跡を見物させる。 もう朝夕は霜がおりて末枯れかかったとある叢の中に、夕陽を斜にうけて、金の輪でも落ちているように光るものがあった。そばへよって見・・・<宮本百合子「金色の口」青空文庫>
  26. ・・・ナポリの、多彩な、陽気な、歌ずきで騒々しい、花と景物にあふれた市場の賑いを描くとき、私どもは決して、ノールウェイの荒涼としたフョールドを描写する感情で描写することはできない。そしてまた、フョールドばかりを眺めて育った人がナポリに来てうける感・・・<宮本百合子「自然描写における社会性について」青空文庫>
  27. ・・・雪の深い地方らしい板屋根の軒を掠めて水芸道具の朱総がちらちらしたり、太鼓叩きには紫色の着流し男がいたりするのが、荒涼とした温泉町に春らしい色彩であった。 なほ子は、すっかり道具をしまった小車を引いて彼等がそこを立ち去るまで見ていた。・・・<宮本百合子「白い蚊帳」青空文庫>
  28. ・・・そんな景色と村道の赭土にくっきり車の軌の跡のめりこんだ荒涼とした有様、鶏や馬の間でのいろんな婆さんや爺さんの他愛もない暮しぶりは、心に刻みつける何かをもって印象に迫って来るのであった。 祖母の家の裏口の小溝の傍に一本杏の樹があった。花も・・・<宮本百合子「青春」青空文庫>
  29. ・・・――四辺の荒涼とした風景にふさわしい絵画的な印象であった。 やがて、地平線にゾックリと黒く林立する数百の汲出櫓が現れた。工場の煙突から煙を吐くだろうが、これは凝っと密集して光のない空に突き刺っている。現実にはこっちからその中へ進んで行っ・・・<宮本百合子「石油の都バクーへ」青空文庫>
  30. ・・・そしてその体裁をして荒涼なるジェネアロジックの方向を取らしめたのは、あるいはかのゾラにルゴン・マカアルの血統を追尋させた自然科学の余勢でもあろうか。 しかるにわたくしには初めより自己が文士である、芸術家であるという覚悟はなかった。また哲・・・<森鴎外「なかじきり」青空文庫>