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し‐あわせ〔‐あはせ〕【幸せ/仕合(わ)せ/×倖せ】例文一覧 30件

  1. ・・・「しかしまあ哲学通りに、飛び下りなかっただけ仕合せだったよ。」 無口な野口も冗談をいった。しかし藤井は相不変話を続けるのに熱中していた。「和田のやつも女の前へ来ると、きっと嬉しそうに御時宜をしている。それがまたこう及び腰に、白い・・・<芥川竜之介「一夕話」青空文庫>
  2. ・・・「とにかく、その女は仕合せ者だよ。」「御冗談で。」「まったくさ。お爺さんも、そう思うだろう。」「手前でございますか。手前なら、そう云う運はまっぴらでございますな。」「へええ、そうかね。私なら、二つ返事で、授けて頂くがね。・・・<芥川竜之介「運」青空文庫>
  3. ・・・こんな慌しい書き方をした文章でも、江口を正当に価値づける一助になれば、望外の仕合せだと思っている。<芥川竜之介「江口渙氏の事」青空文庫>
  4. ・・・たとえばお前が世過ぎのできるだけの仕事にありついたとしても、弟や妹たちにどんなやくざ者ができるか、不仕合わせが持ち上がるかしれたものではないのだ。そうした場合にこの農場にでもはいり込んで土をせせっていればとにもかくにも食いつないでは行けるだ・・・<有島武郎「親子」青空文庫>
  5. ・・・人はみんな省作さんは仕合せ仕合せだと言ってる、何が不足で厭になったというのかい。我儘いうもほどがある、親の苦労も知らないで……。お前は深田にいさえすれば仕合せなのだ。おッ母さんまで安心ができるのだに。どういう気かいお前は、いつまでこの年寄・・・<伊藤左千夫「春の潮」青空文庫>
  6. ・・・を出る時にゃ、まだ薄暗かったが、夏は夜明けの明るくなるのが早いから、村のはずれへ出たらもう畑一枚先の人顔が分るようになった、いつでも話すこったが、そん時おれが、つくづく感心したのは、そら今ではあんなに仕合せをしてる、佐兵エどんの家内よ、あの・・・<伊藤左千夫「姪子」青空文庫>
  7. ・・・弾丸が当ってくれたのはわしとして名誉でもあったろが、くたばりそこねてこないな耻さらしをするんやさかい、矢ッ張り大胆な奴は仕合せにも死ぬのが早い――『沈着にせい、沈着にせい』云うて進んで行くんやさかい、上官を独りほかして置くわけにも行かん。こ・・・<岩野泡鳴「戦話」青空文庫>
  8. ・・・未練がないだけ、僕は今かえって仕合せだと思ったが、また、別なところで、かれらの知らないうちにああいう社会にはいって、ああいう悪風に染み、ああいう楽しみもして、ああいう耽溺のにおいも嗅いで見たいような気がした。僕は掃き溜めをあさる痩せ犬のよう・・・<岩野泡鳴「耽溺」青空文庫>
  9. ・・・ 子供から別れて、独りさびしく海の中に暮らすということは、この上もない悲しいことだけれど、子供が何処にいても、仕合せに暮らしてくれたなら、私の喜びは、それにましたことはない。 人間は、この世界の中で一番やさしいものだと聞いている。そ・・・<小川未明「赤い蝋燭と人魚」青空文庫>
  10. ・・・のみならず仮りに、私達だけが、仕合せになったとしても、永久に安心できることだろうか。この観念は、いつしか、私をして、階級戦の必然をすら教えてやるに至ったのでした。 そして、また、ある時には、ラスコリニコフを空想家として嗤うことができなく・・・<小川未明「貧乏線に終始して」青空文庫>
  11. ・・・いいじゃねえか、お前も女と生れた仕合せにゃ、誰でもまた食わしてくれらあ。それも気がなきゃ、元の万年屋がとこへ還るのさ。」「ばかにおしでない! 今さらどの面下げて亭主のとこへ行かれるかよ。」「まあそう言わねえでさ。俺あ何もお前と夫婦約・・・<小栗風葉「世間師」青空文庫>
  12. ・・・宇治の螢狩も浄瑠璃の文句にあるといえば、連れて行くし、今が登勢は仕合せの絶頂かもしれなかった。 しかし、それだけにまた何か悲しいことが近いうちに起るのではなかろうかと、あらかじめ諦めておくのは、これはいったいなんとしたことであろう。・・・<織田作之助「螢」青空文庫>
  13. ・・・お前たちもお互いに仕合せだった……」私たちが挨拶すると、伯母はちょっと目をしばたたきながら言った。 六つ七つの時祖母につれられてきた時分と、庫裡の様子などほとんど変っていないように見えた。お彼岸に雪解けのわるい路を途中花屋に寄ったりして・・・<葛西善蔵「父の葬式」青空文庫>
  14. ・・・々家へ帰って来る時立迎えると、こちらでもあちらを見る、あちらでもこちらを見る、イヤ、何も互にワザと見るというのでも無いが、自然と相見るその時に、夫の眼の中に和らかな心、「お前も平安、おれも平安、お互に仕合せだナア」と、それほど立入った細かい・・・<幸田露伴「鵞鳥」青空文庫>
  15. ・・・俳句なぞは薄生意気な不良老年の玩物だと思っており、小説稗史などを読むことは罪悪の如く考えており、徒然草をさえ、余り良いものじゃない、と評したというほどだから、随分退屈な旅だったろうが、それでもまだしも仕合せな事には少しばかり漢詩を作るので、・・・<幸田露伴「観画談」青空文庫>
  16. ・・・「ほんとに、太郎さんのようなおとなしい人のおよめさんになるものは仕合わせだ。わたしもこれでもっと年でも取ってると――もっとお婆さんだと――台所の手伝いにでも行ってあげるんだけれど。」 それが茶の間に来てのお徳の述懐だ。 茶の間に・・・<島崎藤村「嵐」青空文庫>
  17. ・・・「でもそれが私の仕合せになるのです。けっして悪いことにはなりません。どうか私のいうとおりにして下さい。」と、馬はくりかえしてたのみました。ウイリイは仕方なしに、剣をぬいて、馬の首を切り落しました。そしてその首をしっぽのそばにおいて、三べ・・・<鈴木三重吉「黄金鳥」青空文庫>
  18. ・・・「私は、仕合せというものをさがしに世界中を歩いているのでございます。」と、そのふとった男がこたえました。「一たいあなたの商ばいは何です。」と王子は聞きました。「私にはこれという商ばいはございません。ただ人の出来ないことがたった一・・・<鈴木三重吉「ぶくぶく長々火の目小僧」青空文庫>
  19.  くるしさは、忍従の夜。あきらめの朝。この世とは、あきらめの努めか。わびしさの堪えか。わかさ、かくて、日に虫食われゆき、仕合せも、陋巷の内に、見つけし、となむ。 わが歌、声を失い、しばらく東京で無為徒食して、そのうちに、・・・<太宰治「I can speak」青空文庫>
  20. ・・・ ――ああ、仕合せだ。おまえがいなくなってから、すべてが、よろしく、すべてが、つまり、おのぞみどおりだ。 ――ちぇっ、若いのをおもらいになったんでしょう? ――わるいかね。 ――ええ、わるいわ。あたしが犬の道楽さえ、よしたら・・・<太宰治「愛と美について」青空文庫>
  21. ・・・黒田が此処に居たのはまだ学校に居た頃からで、自分はほとんど毎日のように出入りしたから主婦とも古い馴染ではあるが、黒田が居なくなってからは妙に疎くなってしまって、今日も店に人の居なかったのを却って仕合せに声もかけずに通り過ぎた。しかしこの家の・・・<寺田寅彦「イタリア人」青空文庫>
  22. ・・・ 以上は口調というちょっとつかまえ処のないようなものを何とかして系統的に研究しようとする方法の第一歩を暗示するものだとして見てもらわれれば仕合せである。<寺田寅彦「歌の口調」青空文庫>
  23. ・・・「じゃまあ芳ちゃんは仕合せだね」「でも旦那は躯が弱いから」 道太は掃除の邪魔をしないように、やがて裏梯子をおりて、また茶の室の方へ出てきた。ちょうどおひろが高脚のお膳を出して、一人で御飯を食べているところで、これでよく生命が続く・・・<徳田秋声「挿話」青空文庫>
  24. ・・・戦災の後、東京からさして遠くもない市川の町の附近に、むかしの向嶋を思出させるような好風景の残っていたのを知ったのは、全く思い掛けない仕合せであった。 わたくしは近年市街と化した多摩川沿岸、また荒川沿岸の光景から推察して、江戸川東岸の郊外・・・<永井荷風「葛飾土産」青空文庫>
  25. ・・・其所が明るくなったのは仕合せである。しかし其所だけが明るくなったのは不都合である。 一般の社会はつい二、三週間前まで博士の存在について全く神経を使わなかった。一般の社会は今日といえども科学という世界の存在については殆んど不関心に打ち過ぎ・・・<夏目漱石「学者と名誉」青空文庫>
  26. ・・・「ありがたい仕合せだ。まるで御供のようだね」「うふん。時に昼は何を食うかな。やっぱり饂飩にして置くか」と圭さんが、あすの昼飯の相談をする。「饂飩はよすよ。ここいらの饂飩はまるで杉箸を食うようで腹が突張ってたまらない」「では蕎・・・<夏目漱石「二百十日」青空文庫>
  27. ・・・左れば此至親至愛の子供の身の行末を思案し、兄弟姉妹の中、誰れか仕合せ能くして誰れか不仕合せならんと胸中に打算して、此子が不仕合せなりと定まりたらば両親の苦痛は如何ばかりなる可きや。子供の心身の暗弱四肢耳目の不具は申すまでもなく、一本の歯一点・・・<福沢諭吉「新女大学」青空文庫>
  28. ・・・不幸な嫁入り先から戻って来てそのような暮しをしている岡本から見ればふき子も陽子も仕合わせすぎて腹立たしい事もあろう。陽子は、世界が違う気楽な若者と暗闘する岡本の気持がわかるような気がした。 彼等は皆で海岸へ出た。海浜ホテルの前あたりには・・・<宮本百合子「明るい海浜」青空文庫>
  29. ・・・ それから先生は、人と云うものが、決して学校で好い点を取る丈が立派なのではないと云う事、利口だと云って褒められて、他人の不仕合わせなのを思い遣らずに威張るようでは、真個に恥しいのだという事をお話になりました。そして、終いに「貴女は、・・・<宮本百合子「いとこ同志」青空文庫>
  30. ・・・前文隈本の方へは、某頭を剃りこくりおり候えば、爪なりとも少々この遺書に取添え御遣し下され候わば仕合せ申すべく候。床の間に並べ有之候御位牌三基は、某が奉公仕りし細川越中守忠興入道宗立三斎殿御事松向寺殿を始とし、同越中守忠利殿御事妙解院殿、同肥・・・<森鴎外「興津弥五右衛門の遺書(初稿)」青空文庫>