・・・ぽつぽつ小さい穴や大きな穴の出来たその古前掛は、並はずれて丈がつまっているだけどこやらあどけない愛嬌さえある。「あら感心にまだこの紐がちゃんとしている」由子は一種の愛惜を面に表して、藤紫の組紐をしごいたりしたが、やがて丁寧にそれを畳んで・・・ 宮本百合子 「毛の指環」
・・・これらの作家たちのほとんどすべての人々は、男も女も十月には赤子であった人々である。あどけない、碧い眼をしたオクチャブリャータであった。ピオニェール、コムソモールとしてソヴェト社会生活のうちに育ち、ラブ・セル・コル活動をとおして、文章というも・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・太古のあどけない平等は失われ、財産の主人である男の父権が確立して女子はそれに従属するものとなりはじめた。奴隷としてつれて来られた他氏族の者の中には勿論女も交っていて、それは女奴隷として労働させられ、男の所有ともなされた。この時代から女性は男・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫