・・・八番 東京工場からまわった連中でアナ、総同盟に属していた職工が多い。 全工場中待遇は最悪。それでも立たず。七番 十五年二十年の勤続、熟練工が多い。 中々まとめ難い。 ○五工 は家庭器具で一 二 三階・・・ 宮本百合子 「工場労働者の生活について」
・・・ 小父貴にでもそれを云われたらともかく一応はふくれるにちがいない娘さんたちが、それと同じ本質のことを、アナトール・フランスの言葉というようなものを引用したらしく文学のように話されれば、何かちがった瞬きようをしてきくという心は、読者の・・・ 宮本百合子 「今日の読者の性格」
・・・ フランスの社交小説の大体は、こんにちのフランスには存在しえない、限界に立つものだった。アナトール・フランスの「赤い百合」でさえも、この作家の最良の収穫たらしめなかった。モーパッサンが、「脂肪の塊」と「女の一生」「水の上」の他の何で文学・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・ ドレフュス事件をいうとき、ゾラがそれにかかわって闘ったことを侮蔑的に見る人はない。アナトール・フランスの思想の発展のモメントが、この事件に連関していることを、近代フランス文学は少くともきまりわるがってはいない。そのドレフュス事件にして・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・本願寺という寺の広間はこうもあろうかと思われる浦上天主堂の板の間の大柱の根に、薄穢く極りわるげにつくねられていた座布団どもの恰好を思い出すと、私の胸にはアナトオル・フランスの一つの物語が自然に浮んで来る。その題は、聖母の曲芸師。 浦・・・ 宮本百合子 「長崎の印象」
出典:青空文庫