・・・を知るべし 夜台長く有情郎に伴ふ 犬山道節火遁の術は奇にして蹤尋ねかたし 荒芽山畔日将にしずまんとす 寒光地に迸つて刀花乱る 殺気人を吹いて血雨淋たり 予譲衣を撃つ本意に非ず 伍員墓を発く豈初心ならん 品川に梟示す竜頭の冑 ・・・ 内田魯庵 「八犬伝談余」
・・・今夜ぜひ夜汽車で出発く人が来そうなことがない。きッと来まい。汽車が出なければいい。出ないかも知れぬ。出ないような気がする。きッと出ない。私の念いばかりでもきッと出さない。それでも意地悪く出たらどうしよう。どうしても逢えないのか。逢えなけりゃ・・・ 広津柳浪 「今戸心中」
・・・近頃の作は、初期の「墓を発く」などから見ると、ずっと印象的に、直観的に描こう、のろのろ描写せず、感情の峰から峰へ飛躍しようとされるらしい。日本ばかりでなく、女の作家はとかく狭いモラリティーに拘泥してきびきび純芸術的に行かないのが多いから、宇・・・ 宮本百合子 「読者の感想」
出典:青空文庫