・・・ この間安倍能成氏が一高の校長となったときの何かの談話で、現代の青年はさまざまの外面的な慰安を求める代り、友情に慰安を求めよ、という意味を云われたということをきいた。安倍さんという人は漱石門下の一人で、昔は「大思想家の人生観」という・・・ 宮本百合子 「生活者としての成長」
・・・さらに指導性について、各自意見の混乱を示している中で、阿部知二は、はっきりファッシズムに興味をもち、人にきいたり一生懸命研究してみるつもりであると断言しているし、フランスから新帰朝の小松清はジイドの文学的節操に感歎しつつ文学における性問題の・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・ 阿部知二は南方経験を作品に書きました。「死の花」という作品が『世界』に出ていましたが、作者が目撃したその土地の人の蒙った残酷な運命、やがて非合理に殺されてしまうことを書いています。その作品で作者は、主人公たる自身がそれらの実状を目撃す・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・や、日露戦争時代の百首の和歌、「阿部一族」その他の小説は、どんな俗人も感服するこの風だけでは書けなかった。ましてや、アンデルセンという北欧の文学者を、その本人の精神よりもロマンティックに日本に紹介した「即興詩人」の訳は出来なかったであろう。・・・ 宮本百合子 「田端の汽車そのほか」
・・・鴎外の歴史文学の卓抜した諸作品には、「阿部一族」のように殉死という忠節の表現さえ、「家」を守る武家の痛ましい封建的な経済事情によるものであることを鋭く描き出した。婦人は「家」に属し、その利害に応じて一生を費し、「家」のために貞操を強要された・・・ 宮本百合子 「貞操について」
○一昨年十二月二十五日 新日本文学主催の文学者のファシズム反対講演会東條 処刑A級戦犯 釈放「安部源基」 1931年 満州侵略がはじまったころ、大泉、小畑をつかっていた男。児玉よしを 台湾への□(二、・・・ 宮本百合子 「東大での話の原稿」
・・・まず第一に昔友達の安倍能成氏が院長をやっていることを彼流に大笑いしたにちがいない。どうだい、オイケンの翻訳と、どっちがおもしろいかい、と云って。それから、いまでもやっぱり目黒の秋刀魚かい、と云いはしなかったろうか。これは学習院の学生達のみち・・・ 宮本百合子 「日本の青春」
・・・ 釈放された人のなかに、安倍源基という名があります。昭和のはじめ、日本の天皇制が侵略戦争をはじめたにつれて、治安維持法がしだいに殺人的な悪法となってゆきました。安倍源基は、警視庁の特高部長でした。それから人民抑圧の手柄によって、警視総監・・・ 宮本百合子 「ファシズムは生きている」
・・・なぜかといえば、たとえば安倍源基という人は、日本の治安維持法による特高警察というものがつくられ、言論や出版の自由をすべて人民から奪って、十何年かの間戦争を遂行して参りましたその治安維持法改悪のたびに立身してきた人間です。安倍源基という人はは・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
・・・日本から行った阿部知二、北村喜八の両氏はこんどこそ、かつて島崎藤村がヴェノスアイレスのペンクラブ大会へ行ったときのようには振舞わないだろう。藤村は世界の文学者がこぞって反ファシズムの文化闘争を決議したその大会で、終始、日本の文学者として反フ・・・ 宮本百合子 「私の信条」
出典:青空文庫