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・・・維新前には藩の調練場であったのが、そのころは県庁の所属になったままで荒れ地になっていた。一面の砂地に雑草が所まだらにおい茂りところどころ昼顔が咲いていた。近辺の子供はここをいい遊び場所にして柵の破れから出入りしていたがとがめる者・・・
寺田寅彦
「花物語」
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・・・旧城趾やその他の荒れ地に勢いよく茂った雑草は見るから気持ちがよかった。そういう所にねころんで鳥の歌、蜂のうなりを聞くのは愉快であった。油絵の風景画などでも、破れた木柵、果樹などの前景に雑草の乱れたような題材は今でもいちばんに心を引かれる。・・・
寺田寅彦
「路傍の草」