・・・そして、明治維新という不具なブルジョア革命は、事実ヨーロッパにおけるように市民による革命ではなくて、下級武士とその領主たちが、一部にふるいものをひきずったままでの近代資本主義社会への移行であった。明治維新の誰でも知っているこういう特質は、「・・・ 宮本百合子 「新しいアカデミアを」
・・・今のように表面的にはそういう新たな歴史の建設的推進力が見にくくされているような時期には、窮乏化する小市民インテリゲンツィアが、確信をもって新たな次代の階級へ自身を移行させることが困難であると同様に、恋愛や結婚の実際に当っても、本質的な発展は・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・ローザの経済主義的な誤謬、トロツキーの世界革命がおこらない間は、それぞれの国での革命、社会主義生産への移行は不可能であるとした理論などは、こんにちのソヴェト同盟の存在と民主中国の事情を研究すれば、誤りであることが明瞭です。 政府の挑発的・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ブルジョア作家たちは、その本質から、作家としての完成を個人的自己完成としてしか理解し得ないため、その努力を取材から取材への一見めあたらしげな転々たる移行およびその扱いかた、書きかたの練達へと集中する。彼らはいかに数多く一つから一つへと書きま・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・歴史一般が、今日は重く顧みられているが、それは過去の炬火として今日へ光りをそそぐべきものとして扱われていて、今日の現実の光が過去の現実を明晰にして明日の糧とするという意嚮に立つ面は弱いと思われる。いくつかの文学作品の題材は、過去に求められて・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・は、地球の面に行われた人類の移行の理由と結果とをある程度まで知らせると思う。それとともに冨山房の百科全書の「言語地理学」は、あながち言語学者だけによまれるための本ではないであろう。 太古のエジプトでは、僧侶が人の病をいやす役目もはたして・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・ いろいろに引きとめるのをきかないで私は手廻りのものを片づけたり、ぬいだまんま衣桁になんかかけて置いた浴衣をソソクサとたたんだりした。 たえず心をおそって来る静かな不安と恐れとがどんな事でも落ついてする事の出来ない気持にさせた。・・・ 宮本百合子 「悲しめる心」
・・・そこをあけると、玄関が二畳でそこにはまだ一部分がこわれたので、組立てられずに白木の大本棚が置いてあり、右手の唐紙をあけると、そこは四畳半で、箪笥と衣桁とがおいてあり、アイロンが小さい地袋の上に光っている。そこの左手の襖をあけると、八畳の部屋・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ることの誤りは、すでにプロレタリア文学運動の初期に論議されたことであったが、こんにちから明日へかけての激しい歴史の動きの中では、世界あらゆる国々で、ファシズムと戦争挑発に抵抗を感じる進歩的な人々の階級移行がはじまっている事実が着目されなけれ・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ 一九三五年以降のフランスの社会的事情の変遷、人民戦線の拡大等は、文化の上にヒューマニズムの提唱をもたらした。小松清氏等によってヒューマニズムの提唱は日本にも移された。日本に於けるヒューマニズムの紹介は、社会主義的リアリズムがかつて・・・ 宮本百合子 「今日の文学の鳥瞰図」
出典:青空文庫