・・・その構造の如何なる部分に如何なる移動が起ったかが第一義的の問題である。従ってその地質的変動によって生じた地震の波が如何なる波動であったかというような事はむしろ第二義以下の問題と見られる傾向がある。この方面の専門家にとっては地震即地変である。・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・この場合は明らかに墨のコロイド粒子群が内から外へ進行する際にその進行速度にはなはだしい異同ができ、その異同が助長されるのであろうが、この事実の形式的類推から放電陽像の場合にも、何物か粗粒的なものが内から外のほうへ広がるのではないかという想像・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・例えば水草を追って移牧する未開人にとりては時とともに利害の係る土地の範囲を移動す。また一つの都府の市民というごとき抽象的の団体を考うる時はその要素たる各個人とは独立に時とともに不変なる標準も考えらるれども、一般には必ずしも然らず。例えば一般・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・かくのごとき差別が偶然的局部的の異同に支配さるるとせば、広区域にわたるマクロスコピックの平均状態を知るのみにては信憑すべき実用的の予報は不可能に近し。 上記のごとき地殻の弱点が一箇所に止まらず、多数に分布されいる場合には更に困難なり。こ・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
・・・それで、太陽黒点と関係のあるらしい週期的な気象学的あるいは気候学的現象の異同が自然に干支と同じような週期性を示すことがしばしば起こりうるわけである。たとえばある特定の地方である「水の兄」の年に偶然水害があった場合に、それから十一年後の「水の・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・ 火山の爆音の異常伝播については大森博士の調査以来藤原博士の理論的研究をはじめとして内外学者の詳しい研究がいろいろあるが、しかし、こんなに火山に近い小区域で、こんなに音の強度に異同のあるのはむしろ意外に思われた。ここにも未来の学者に残さ・・・ 寺田寅彦 「小爆発二件」
・・・それから前脚を一本ずつずっと前へ伸ばして頭を低く仰向いて大きな欠伸をして、尻尾をSの字に曲げてから全身を前脚の方へ移動しのめらせてそうして後脚を後方へのばした。これからそろそろ庭へ出て睡蓮の池の水をのんで、そうして彼の仕事の町内めぐりにとり・・・ 寺田寅彦 「初冬の日記から」
・・・しかるに実際上は、避くべからざる雑多の複雑な偶然的原因のために、この一定であるべき間隔に少しずつの異同を生じ、理想的にはたとえばTであるべき間隔が T+ΔT となる。この ΔT がどういう順序に相次いで起こるかということもやはりまた一種の「・・・ 寺田寅彦 「電車の混雑について」
・・・それが死んだねずみであるか石塊であるかを弁別する事には少なくもその長さの十分一すなわち〇・五ミクロン程度の尺度で測られるような形態の異同を判断することが必要であると思われる。しかるに〇・五ミクロンはもはや黄色光波の波長と同程度で、網膜の細胞・・・ 寺田寅彦 「とんびと油揚」
・・・それが週期的ないし非週期的の異同の波によって歳々の不同を示す。 この平均温度というものが往々誤解されるものである。どうかするとその月にその温度の日が最も多いという意見に思いちがえられるのである。しかし実際は月の内でその月の平均温度を示し・・・ 寺田寅彦 「春六題」
出典:青空文庫