・・・芝居より映画の方が移動にも便利だし、現実をそのままカメラに掴みこんで、而も強い芸術的効果があげられるため、ソヴェト映画の主題は、実にひろい。「十月」から「みなさん、歯を磨きなさい!」というところまで拡っている。 映画はソヴェト同盟内各共・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・を与えられた石川達三、高見順、石川淳、太宰治、衣巻省三その他多くの作家が、言葉どおりの意味での新進ではなく、過去数年の間沈滞して移動の少なかった純文学既成作家に場面を占められて作品発表の機会を十分持ち得ないでいた人々であり、長年の文学修業と・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・これは医道のことなどは平生深く考えてもおらぬので、どういう治療ならさせる、どういう治療ならさせぬという定見がないから、ただ自分の悟性に依頼して、その折り折りに判断するのであった。もちろんそういう人だから、かかりつけの医者というのもよく人選を・・・ 森鴎外 「寒山拾得」
・・・「そんな堅白異同の弁を試みたっていけない。」 主人は笑談のような、真面目のような、不得要領な顔をしてこんな事を言った。「そうでないよ。君は科学科学と云っているだろう。あれも法なのだ。君達の仲間で崇拝している大先生があるだろう。A・・・ 森鴎外 「独身」
出典:青空文庫