・・・もしも最初の南々西の風が発火後その方向を持続しながら風速を増大したのであったらおそらく火流は停車場付近を右翼の限界として海へ抜けてしまったであろうと思われるのが、不幸にも次第に西へ回った風の転向のために火流の針路が五稜郭の方面に向けられ、そ・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・正客の歌人の右翼にすわっていた芥川君が沈痛な顔をして立ち上がって、自分は何もここで述べるような感想を持ち合わさない。ただもししいて何か感じた事を述べよとならば、それは消化器の弱い自分にとって今夜の食卓に出されたパンが恐るべきかたいパンであっ・・・ 寺田寅彦 「備忘録」
・・・近頃流行る飛行機でもその通りで、いろいろ学理的に考えた結果、こういう風に羽翼を附けてこういうように飛ばせば飛ばぬはずはないと見込がついた上でさて雛形を拵えて飛ばして見ればはたして飛ぶ。飛ぶことは飛ぶので一応安心はするようなもののそれに自分が・・・ 夏目漱石 「中味と形式」
・・・近年の男子中には往々此道を知らず、幼年の時より他人の家に養われて衣食は勿論、学校教育の事に至るまでも、一切万事養家の世話に預り、年漸く長じて家の娘と結婚、養父母は先ず是れにて安心と思いの外、この養子が羽翼既に成りて社会に頭角を顕すと同時に、・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・このときは、山田清三郎が、右翼的日和見主義の自己批判を発表した。当時「ナップ」の書記長は山田清三郎であった。「前進のために」をよむと、誤りをみとめつつ、なお林房雄などの卑劣さに対する本質的ないきどおりをしずめかねて、うたれつつたたかれつつ、・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・アナーキスト出身で著名な婦人作家で、その才能の素質と妻としておかれている偽瞞的な環境のためにアナーキズムから社会観を本質的に高められることができず、労働者弾圧にも動員される右翼の暴力団の生活に近接する機会をもつようになって、その描きてとして・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・普選で成功するために総同盟が右翼化することを決定した年でもある。無産階級文学運動の中にもこの対立がはげしく反映した。江口渙、壺井繁治、今野大力などアナーキストであった作家詩人が、次第に共産主義に接近しつつあった。無産派文学団体の改組が頻繁に・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)」
・・・ 複雑な再建設期の社会主義的前進の意味を理解しない右翼「同伴者」作家群の或るものが大衆から批判されるようになったばかりではない。 実際に職場のなかへ入って労働者の建設的な生活に混り、それを観察することによって、熱心なプロレタリア芸術・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・もしわれわれが本当に人間として基本的なものだけは守り通すという決意をもち、それが実践のためには牢獄と死をさえ辞せないだけの強い意志だけあれば、必ず我々はこのようなお調子にのった今日の右翼攻勢を粉砕しうる時はくる。」しかし、「戦術的には従来の・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ルール地方の有力者、シューマン仏外相、国民党右翼の暗殺団C・C団の指導者陳立夫などの熱烈な支持をうけている。ブックマン博士の「新世界創造の闘争綱領」というものには、「民主主義のためのイデオロギー」として「霊感的民主主義」を必要として「かつて・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
出典:青空文庫